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やる気を失っていた息子が、姿勢を整えることで、自尊心を取り戻した

教材マスターの集いMAXアイキャッチ2.001

じーくんの紹介

息子は,地域の小学校の特別支援級の4年生です。療育を始めて2年になりますが,この2年間のお話をお届けしたいと思います。

療育を始めた時の様子

スライド_じーくん

療育を始めたころ、じーくんにはこんな様子でした。
・姿勢保持が難しく,椅子に座り続けることが困難。(前庭覚,固有受容覚が低反応)
・座るとき,背もたれに寄りかかり,左手は下に落ちていた。
・見本を注視するのが難しい。
・不全感があり(これが,じーくんのポイントになります),コントロールの放棄が難しい。
・J☆sKepsTM2.4点。学習態勢・セルフマネージメント・表出性のコミュニケーションに注目させてスタート。

システム理論

スライド_じーくん

J☆sKepsTMが2.4点なので,本来ならば静態的システムの中でゴールをきちんと決めてあげて,わかりやすく手取り・足取りという環境が望ましいところではあるのですが,この頃,じーくんは発達がとてもでこぼこで,学校では,でこぼこの中でも「できるところ」を見られることがとても多かったです。ですので,流動的システムの中で,目標や環境が常に変わってしまう,難しい環境の中で過ごしていて,できることと求められることのちぐはぐさから,本人はこの時とても苦しんでいたのではないかと振り返ります。

スライド_じーくん

取り組む目標としては,J☆sKepsTM2.4点ですので,「三種の神器」,「アカデミック」,「手を育てる」に注目してきました。

スライド_じーくん

Perception first cycle(知覚サイクル)で考えていくと,まず,座ることが難しかったです。姿勢が崩れてしまうために,「見る」「見つづける」ことが苦手でした。ですので,ここで姿勢保持のトレーニングを始めました。

  次にやっぱり見本などを,見つづけることができず,「できないな,なんでかな」と少しイライラが募ってきます。

  そして,根がまじめな子で,やろうとはしますが,字が大きくなってしまったり,枠もあってないような字を書いていたりしました。だんだんいやになって,「これならもうこの課題は,おれは,おれの意思で,やらないんだ」という発想になってしまい,ひどい時には鉛筆を投げてしまったり,私に攻撃してきたりすることも多かったです。

  サイクルが回っていないことはないのですが,不自然なかたちで,正しいサイクルが回ってはいないなというかんじでした。

療育の実際

バランスボール

スライド_じーくん

Perception(知覚)を支える基礎力となる「姿勢保持」のための身体づくりに取り組みました。
1.ボールでジャンプ
2.ボールに座ってバランスをとる
3.ボールに座って身体を固める
4.ボールを使ってひこうき
5.ボールになろう
  サイクルの悪循環を止めるために,家庭でも療育でも,これらの身体づくりに取り組みました。

スライド_じーくん

 家で パソコンに向かっている様子ですが,バランスボールを椅子代わりにしています。この時,パソコンで見ているのはYoutubeなのですが,本人は注視しているなんていうつもりは全くなく,バランスボールに乗っています。

スライド_じーくん

【左の写真:療育を始めたころ】
  完全にお尻が落ち,手が伸びきってしまい,このままダーッと崩れてしまいそうです。

【右の写真:センター南に週に1回は通っている現在の様子】
  身体がきちんと固まっていますし,体幹が鍛えられてきて,自分でバランスを取ろうとしています。「脇閉めてていいね」など声かけをしてモチベーションもアップさせつつ行っています。

図形書き

スライド_じーくん

 療育のほうでは,図形書きに取り組みました。ステップとして、
1.椅子を厳選しました。
2.道具を厳選しました。(三角シャープペン→ステッドラー→シャープペン+ぷにゅグリップ)
3.左手を添える・シャープペンを持つ・書くことから始めました。(1つの見本を見て,書く)
4.実行機能に配慮して,すべきことを約束しました。(足を着く→左手を置く→シャープペンの持ち方)
5.サイズを調整する為に,目印として上に線を引きます。

道具の変遷

スライド_じーくん

  三角シャープペンは,じーくんの場合は,どうしても持つと親指がずり上がってきちんと持てませんでした。これだと
少し細かったようです。

  次にステッドラーシャープペンは見た目からかっこよくて,すぐに好きになりました。持ってみると,グリップの部分が太くて持ちやすく,三角の部分にきちんと指を合わせて置くことができました。「おれでもこれだったら持てる,書けるぞ!」という様子を見て,私も,道具選びの大切さを学びました。ただ,これの唯一の難点が,太いので小さい字が書けないんです。

 それで,また三角シャープペンに戻しましたが,じーくんにはやっぱりうまく持てませんでした。

 そこで,キャンパスペンシルに,ぷにゅグリップをつけると,指も合わせやすく,感触もよいということで,我が家ではヒットしました。

  このように何段階も経て,道具を厳選していきました。

スライド_じーくん

  さきほど「見本を注視」ということを言いましたが,右側に取り出してあるのは,単語帳です。図形の書き順を書いて,一番注視しやすいところに見本として置きました。

取り組む前のお約束

スライド_じーくん

また,私が彼と触れ合うときのエチケットとして,「お約束」ということがあります。この図形を書くときの場合は, 1.足を着く 2.左手を置く 3.シャープペンの持ち方(いい持ち方)を確認します。そうやって,すべきことを明確にすると,どうやら身体への指示が出しやすいようです。

  右上の写真(以前の写真)を見ていただくと,左手が落ち,お尻がずれ,背もたれに寄っかかり,きちんと座れていませんでした。

出来るようになったこと

スライド_じーくん

じーくんが出来るようになったことは、
・姿勢保持をして椅子に座り、書きやすい姿勢で取り組めるようになった。
・見本を中止できるようになった
・文字をそろえて書くことが出来るようになった。
・Perception-first Cycle(知覚サイクル)が回るようになり、不全感がなくなった。

という進歩が見られました。今はワーキングメモリを重視する課題に取り組んでいます。

書字の変化

スライド_じーくん

【2011年の書字】
  一番左の写真が,2011年のときの字です。枠はあってないようなものです。字を書くのが嫌いなので,「TBS」とか「日
本テレビ」とか,本人のモチベーションが上がる言葉を書いていました。
  図形は,このとおり怒りが伝わってくるような書き方です。

【2012年の書字】
  ステッドラーを使い始めて,だんだん書くことに苦手感が無くなってきたころです。この時に書いているのはまだ,「テツ&トモ」など,本人の好きな単語や将来の夢などを選んでいます。
  図形は,上に線を引いてあって,「この中に書くんだ」と,枠がなんとなく捉えられるようになってきました。

【2013年の書字】
  もう好きな字を書いているわけではなく,獲得していくべき実用的な言葉,こちらが提示した言葉も書けるようになってきました。
  図形はだんだんそろってきて,「何個書くか」というお約束もできるようになりました。

まとめ

スライド_じーくん

【自己意識と社会性】に立ち戻ってみると,Perceptionでは,姿勢が整ってきたので,注目ができるようになってきて,枠や見本がわかるようになります。「わかったぞ,モデルと同じに書くぞ」と本人が思って書くと,母からも「あ,できたね!じーくんかっこいいね!見本と同じじゃん!」と言われて,とても嬉しくなってきます。「じーくん今日は絶好調だね!」という言葉が一番好きみたいです。

 最後に,「見て,見本と同じじゃない?書き順もすごくよかったよ!」と言いながら振り返ります。

  こうして,最初はでこぼこしていたサイクルが,最近ではきちんと望ましいかたちで回るようになってきて,結果,不全感がなくなってきたのかなと思います。

  今は,ステップアップして,ワーキング・メモリを育てる課題に取り組んでいます。図形を見て,頭に留め置いて,書こうとする。見本は近くにはなく,ワーキング・メモリで留めてやっています。まだなかなか大変で,苦しむ場面も多いのですが,そこでまた,このサイクルの図に立ち戻り,「どこがうまくいっていないのかな」「それをどうしていけばいいのかな」と考えながら課題に取り組んでいっています。

  「気持ちが下がる(不全が募る)と,やる気が起きない」という現象にもう捕われることなく,その根本原因はどこなんだと探すと,必ずというほど身体のことが出てきて,やはり身体の問題は切り離せないことなのかなと感じます。「親指が育っ
ていない」「体幹が整っていない」などというところに行き着くんだということが,改めてよくわかりました。

  大変ですが,コツコツやっていくしかないんですよね。やはりコツコツ積み重ねて,今の取り組みも,いい形で皆さんと共有できたらいいと思います。

質疑応答

Q. バランスボールは一日どれくらい乗っているんですか?

A. パソコンを見ている時は,ほぼずっとです。,パソコンをするのはだいたいご褒美の時間なので,喜んで座っています。

Q. ほめるときのポイントは?

褒め方としては,抽象的な言葉ではなく,具体的に,どこがどのように,ということを言います。例えば,「お尻がきちんと後ろに下がってえらいね」とか,左手が少しずれていたとしても,「じーくん,前は左手ぜんぜん置けなかったのに,すごいね!でももう少しここに置いてみようか」など,具体的に「どうするのが僕はえらいのか」「どうするとママから褒められるのか」―望ましい姿をしたからママは褒めてくれるんだな,ということがわかるように,賞賛・絶賛しているつもりです。

すぐ手が出てしまう息子が、自分で考えて気持ちを伝えられるようになった

教材マスターの集いMAXアイキャッチ3.001

お子様の紹介

息子は現在小学校の個別支援学級に通う6年です。今日は主に,「知覚」と「判断」に注目してご紹介します。しっかり見て,情報を処理させるということに取り組んできました。

1年前の息子の様子

一年前のJ☆sKepsTMは2.6点。視点が定まらず,視覚的な情報を得ることが苦手でした。また聞き取った言葉を頭に留め置くことが苦手で,情報が処理しきれず,手が出てしまうこともありました。
たすくの先生たちと「指示理解・セルフマネージメント・注視物の選択に注目しよう」と決め、必要なときに必要な情報に注目することができるように視覚機能を高めることにトライしてきました。

スライド_れおくん

J☆sKepsTM2.6~3.3点になって,静態的システムから流動的システムのほうに移行しますが,実際は,学校生活の中で変更なども多く,常に流動的な環境にいます。

取り組む機能的な目標は,J☆sKepsTMの点数から,「三種の神器」「アカデミック」は1st~2nd,「生活スキル」「インディペンデント」「社会性」は1stに取り組みました。

スライド_れおくん

「知覚(Perception)」では,視点が定まらず,視覚的な情報が得られないので,言葉が頭に留まらない。そのため聴覚と視覚から得た情報をコンビネーションさせることが難しくて,正しい判断ができません。それで心的処理ができないので,防衛反応として「攻撃してしまえ」と判断して,手が出てしまうことがあります。

 手を出してしまったことで,相手も嫌な気持ちになりますし,息子自身も「たたいてしまった…」と落ち込んで傷ついてしま
う。そんな風に,サイクルが正しく回らないという状態でした。

  特に学習の中で見られたのは,新しい問題とか,足し算で少しパターンを変えて出題すると,しっかりと「見る」ことができないので,ぱっと断片的に目に入った情報しか取れず,さらに情報を留め置くことができないので,すぐに「やだ」と拒否をしたり,投げだしてしまうことがよくありました。

療育の実際(知覚)

スライド_れおくん

実際に知覚(Perception)で取り組んだのは,情報を入力しやすくするために,視点を定める練習です。

<教材>
1.バランスボール
2.バランスディスク
  センター南教室ができてからは,週に2~3回身体作りに取り組み,バランスディスクは家での宿題でも取り組みました。

バランスボール

スライド_れおくん

昨年のアセスメントのときは,正面にいる松永先生を見続けることも,姿勢の保持も難しかったです。
  姿勢の保持ができるようになったら,ボールに座って,上下にジャンプしながら,静止した対象物を見続けることに取り組みました。

<ポイント>
◎今やること以外の刺激をなくす
◎「○○を見て(ex.お母さんの目を見て)」と望ましい目標をあらかじめ伝えてから取り組む
◎できていることをフィードバック(ex.足を閉じている,口を閉じているなど)

バランスディスク

スライド_れおくん

上の写真は一年前です。この時は,身体をひねることも難しかったのですが,後ろから腰を支えてもらうことで,視点を定めることができました。

 

スライド_れおくん

現在の様子です。トーマスが好きなので,トーマスのシールを母の指先に貼って,「これを見てね」と言うことで,視点を定めることができています。

療育の実際(判断)

スライド_れおくん

次に「Judgment・Programming(判断の練習)」についてですが,情報に注目することと並行して,情報を頭に留めおくことの練習に取り組みました。

<教材>
1.暗算
2.ブログ

暗算

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暗算は,ワーキング・メモリに配慮し,音韻ループのみの問題と,視空間メモ+音韻ループの問題に分けて取り組みました。

【例】
  「15+2」と「34+2」という問題で,どちらも同じ「2桁+1桁」の問題ですが,「34+2」のほうを何度も聞き返してくることが多かったです。
  「15+2」は「じゅう・ご・たす・に」と4音です。これだと音韻のみでできたのですが,「34+2」になると,「さん・じゅう・よん・ たす・ に」で全部で5音の問題になります。これだとちょっと難しかったり確実ではなかったりしたので,やはり何度も聞き返してきました。

  次に,2桁+2桁の問題で,「34+25」になると,全部で7音の足し算になり,これは音韻ループだけでは難しくて,視空間メモがあると解くことができました。

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  これで情報を留め置ける限界がわかったので,5音の足し算からスタートして取り組んできました。

  同じ5音でも,「20+15(に・じゅう・たす・じゅう・ご)」という2音+2音の場合と,「35+4(さん・じゅう・ご・たす・よん)」の3音+1音,「2+36(に・たす・さん・じゅう・ろく)」の1音+3音とパターンがあり,パターンを変えると切り替えが難しかったので,2音+2音ならそれを続けて,次に3音+1音,1音+3音と出題し,最終的には全てのパターンを取り混ぜて計算をしていきました。 

スライド_れおくん

 ここでのポイントは,まず出題の際の注意喚起です。

目が合ったときに問題を言う,もしくは,息子のほうから「いいよ」と合図をくれたとき,もしくはこちらの方から「いい?」と確認をして,しっかり聞く態勢になってから問題を伝えるということに注意しました。

  音韻のみの暗算が難しいのは,指示が聞き取れても計算ができない場合と,式自体が留め置けない場合があります。

  「34+25」のときには,『34+なに?』とか,『34+15?』と,聞き返してきて,後ろの数を留め置くことが難しかったです。

  その時は,カードを見せて,自分で『34+25は?』と読み,一旦カードを伏せるんですが,答えが出ると,『確認するよ』とカードを見せて,『34+25は59』と,式と答えを必ず読ませるようにしました。

昨年と比べると,式を留め置けるようになりましたし,先生のほうもしっかりと見るようになりました。

ブログ

スライド_れおくん

 次に取り組んだのはブログです。ブログはまず単語の入力から始めました。イラストがあり,その下にアルファベット,その下に仮名を書いたものを使いました。

  最初は留め置く時間を短くしてあげる配慮と,眼球運動で目をキョロキョロさせて情報を得ることがとても難しいので,目の動きにも配慮して,このときはパソコンではなく,入力する画面と,キーボードが一つの画面上にあるタブレット端末(ipad)を使って入力を進めていきました。

  次に,2~3語文ですが,これもipadを利用して,まず自分で文を読ませて,さらにつぶやきながら入力することを意識させました。

  アルファベットでの入力もだいぶ慣れてきたと思いますし,留め置く時間もすこしずつ長くなって,それに伴って目の動きも少し改善してきたので,今年に入ってから,パソコンでのブログの入力を始めました。

内容については,ブログを書く直前のことしか書かないことが多いので,「学校のこと・家のこと」など簡単な選択肢を見せて,そこから選んで内容を書くようにしていました。そしてブログを始めて半年以上経ち,最近は「今日これ書く!」「この写真使いたい」など自分から提案してくれることもあります。

  入力に際しては,療育でいただいたフォーマット(いつ・誰が・どこで・どうした)を利用して下書きをさせていますが,これを直接入力するのは難しいので,私のほうで,文節ごとに区切って,わかりやすくなるよう清書をしています。それをスラッシュごとに読み上げ,留め置いて,入力し,最後に見本と同じように打ち込めたか確認します。

 このようなスモールステップで留め置く量を増やしていきました。

指導してきた結果、今は・・・

スライド_れおくん

  今は,暗算のほうは,2桁+2桁で繰り上がりが2回ある計算に取り組んでいます。かなり難しいです。視空間メモが活用できなかったときには音韻ループが頭の中で消えてしまうので,視空間メモと音韻ループのバランスを整えるために,式を聞いて,それを筆算で書いて,解くことに取り組んでいます。

  ブログでは,文節ごとにスラッシュを入れて,留めおいて入力することを続けています。

スライド_れおくん

指導してきた結果、
・人や物によく注目できるようになりました。
・困った時,少し考えて行動するようになってきました。
(電車に乗り遅れたら,次の電車に乗ろう!と切り替えられるようになったり,電車賃が足りなくなったときに,自分から「歩いて行くよ」と決めたり)
・嫌なことがあった時に,とっさに手がでずに,考えることができるようになってきました。
(『叩いたら,痛い?』→『うん,痛いよ』と聞くと→拳を下げる)

スライド_れおくん

【現在のPerception first cycle (知覚サイクル)】
情報が頭に留まり,注目できるようになってきた

嫌なことがあっても,冷静に判断できるようになってきた
「叩くと痛いから,叩かずに言葉で返そう」

「待って」「やめてよ」と言える

笑顔で分かり合える
 というサイクルがうまく回るようになり,それが社会性にもつながって,伸びてきたと感じます。

これまで療育でやってきたことに加えて,センター南教室が近くにできたことで,この1年本当によく通いました。その取り組みのおかげもあったと思うのですけど,J☆sKepの点数も思ったよりも伸びて,生活の中でも分かり合えることがとても増えてきました。

  ただ,状況によっては冷静には判断できないこともありますので,これからは,あふれた時や,怒りをどうコントロールするかが課題になるので,これからもそれをふまえて,スモールステップでがんばっていきたいと思います。

質疑応答

Q. 身体の改善とともに,情報の留め置きや,「見て」に応える時間もだんだん長くなってきたと思いますが,身体づくりと,「留め置く」サイクルと,どちらを重点的にやってこられましたか?

A. どちらも並行してやってきました。身体づくりをしないと問題を見れないし,どちらかを重点的に,ということでは,できなかったと思います。

Q. おうちで身体づくりや勉強をする際,一日のノルマを決めていますか?

A. 時間ではなく、問題数で決めています。問題の難しさによって,30分だったり1時間だったりするので,「プリント何枚」という決め方です。ブログは毎日書こうとしています。

自分のことを伝えられるようになり、文章の読解力もアップした

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うりくんの紹介

療育を始めてから5年経ち,うりくんは,小学校4年生になりました。毎年受検しているJ☆sKepsTMアセスメントは,3.1点まで向上しています。幼児期から現在まで,『聞くこと,読むこと,書くこと』にじっくりと取り組んできたうりくん。今では,日常生活での体験を元にした問題文を作って,「どこで?,誰が?,何を?」の内容を読み取ることができるようになってきました。

小さい頃のうりくん

小さいころのうりくんは,いろいろな活動を自分なりにやりたい思いが強い,電車が大好きな男の子でした。 絵本が大好きなお母さんは,熱心に絵本を読み聞かせようとしていました。うりくんは,電車以外になかなか関心を示してくれません。日常生活では,嫌な体験や失敗した経験をすると忘れられずに,パニックを起こしたりすることもありました。

たすくと出会ったとき

  たすくとうりくんとの出会いは,年長さんの夏です。ご両親は「小学校への就学をどうしようか?」と悩まれている時期でした。当時のJ☆sKepアセスメントは,1.5点。学習態勢を維持できなかったり,見通しが持てずに離席したり苦労していました。そこで,イラストを用いたオリジナルのスケジュール帳とコミュニケーションブックを作り,大人との二項関係を築くことを重視した療育を進めていきました。

うりくんの様子

うりくんのスライド

子どもの様子ですが,J☆sKepsTMは,入会時1.5点でした。現在は3.1点になりました。年長の時は,こちらの働きかけに対して,見ていないし,聞いていないし,その場にいられないという状況でした。

  小1の時は,覚えたフレーズを口ずさんでいましたが,同級生からは,「どうして話せないのに読めるの?」と言われていました。また,音読をしているけれど,イメージを持って読んでいるわけではありませんでした。

うりくんのスライド

小1から2年の頃は,5W1Hの質問の意味が分からず,問題が解けませんでした。「誰」って言われても,何のことか分からなかったようです。

  小3の頃は,「どうしたの?」などの会話が成り立ちませんでした。これについては,読解の問題として,今も分からない様子があります。

  本人の様子を見ていると,考えているのか,それともボーっとしているのかが分かりにくいです。そのため,私は,本人の主体性を重視することを意識しています。 しかし,待つことが大事だと分かっていても,私もイライラしてしまうことがあります。そこで,対応策として,ホワイトボードを使って,文字で書いて伝えたり,20秒位待ってから次の指示をしたりするよ
うにしています。

うりくんの機能的目標

うりくんのスライド

読書の機能的な目標は,「絵本・小説・漫画・歴史物等を読んで、活動・状態・行動・感情の変化を選択肢から読み取ることが出来る」に取り組んでいます。

療育の実際

絵本の読み聞かせ(年中~年長)

うりくんのスライド

次に,絵本の読み聞かせについて,ご紹介します。初め,私は,耳が聞こえていないと思っていたのですが,検査をしたら聞こえていることが分かりました。そこで,「100册読んで,その中で1冊でもヒットすればいいや」というくらいの気持ちで,一日10~20冊の絵本を読み聞かせました。そうは言っても,彼は見てないし,聞いていないし,その場にいないという
状況だったので,読んだ本の実績を記録することを,母の療育の励みにしていました。何の本を何回読んだかを記録できるWEBサイトがあって,母のモチベーションを維持していました。また,読んだ本のタイルを記入するということも取り組んでいました。

日記(小1~現在)

うりくんのスライド

次に,取り組んだのは日記です。小1から取り組み始めました。読解は,イメージが膨らまず,内容が分かりづらいので,自分が経験したことを文章にすることで,イメージを膨らませて欲しいと思って取り組んでいました。本人は,絵を描くことが好きなので,それを動機付けにして,絵日記形式にしました。

小2の頃は,その日の活動を書いていました。始めは,ホワイトボードに,母が文を書いて,模写をさせていました。次第に,ホワイトボードは,日記を書く際のヒントを書いたり,漢字のヒントを書いたりするようになり,使い方が変っていきました。

うりくんのスライド

  小3の頃からは,メモのスケジュールを手掛かりにして文章を書いていき,最後に,気持ちを書くことに取り組みました。「そして」を使って,複数の文章を書いたり,「!(感嘆符)」の表現を使ったりしながら,文がたくさん書けるようになりました。

読解(小4夏~)

うりくんのスライド

小4になって取り組んだことは,読解です。問題文には,本人の実際の生活場面を使いました。また,「~なので」「~のために」など,出題のパターンが替わると,意味が分からなくなってしまっています。

プリント問題で困っていること

うりくんのスライド

また,実際に療育を進めていく中で,プリント問題で困っていることがありました。それは,質問に対して,口頭で,単語だけで答えてしまうことです。そこで,文末表現の選択肢を使って,「~からです」などの答え方を教えました。また,「~なので」,「のために」など出題のパターンが替わると,内容が読み取りにくいことがありました。

  この他,「いつ」という質問も分かりにくかったです。このような目に見えにくいものや,経験が乏しいものについて,考えることが今後の課題だと思っています。

うりくんのスライド

実際に使った問題をご紹介します。始めは,出題文をそのまま抜き出して書き写せば,答えになるような形式にして,スタートしました。徐々に,問題文から,必要ない文を取り除いて答えるようにしていきました。 質問の文章は,できる限り統一して取り組みました。

自分のことを伝えられるようになり、文章の読解力もアップした

うりくんのスライド

日記を書くことで、日々の活動や気持ちの表現を伝えられるようになってきました。課題としては、話題を深めることは難しいので、今後は自分でテーマを決めて文章を書いたり、内容を深めていけたらいいなと思います。

読解では、5W1Hのパターンが決まった、簡単な問いについては答えられるようになった。いつ、どうしての問いや問題文を読むことが苦手なので、内容のイメージ化を持って、取り組めるようにしたいなと思います。

質疑応答

Q. 本の読み聞かせをしていて,聞いてくれているのかなと感じられた時期はいつ頃ですか?

A. あるとき突然でした.ページを読み飛ばしてしまったときに,「このページを読んでいない」と言われたことで,気づきました.また,自分から好きな本を持ってくるようになり,読んだ内容が頭に入っているんだなと思いました.

Q. 読む場所は決めていたのですか?

A. 母自身がリラックスする場所で,読んでいました.全然,聞いていないので,絵本の開拓をするくらいの気持ちで,続けていました.

日記を書くようになった時期や内容は何ですか?

A. 私は,食べ物日記から始めました.今日を食べたものを書く(単語のみを模写する)ことから始めました.主語や動詞を加えて書き始めたのは,小学校1年生位です.見本の文章を真似させて,見本をフェードアウトしていきました.

Q. 絵日記のイラストは,本人のイメージですか?

A. はい.最初は,自分の顔だけだったのが,少しずつ家族の顔や表情など,広がりが見られるようになっていきました.また,「今日,悲しかったよね」など,フォローをしながら書かせていきました.

Q. 日記で書く分量はどの位ですか?

A. 3~4行です.内容は,活動+気持ちの言葉です. 気持ちの言葉は,カードや選択肢の中から選ばせています.絶対違うだろうという表情も混ぜて呈示するようにしています。

Q. 気持ちの言葉は,何が多いですか?

「楽しかった」が一番多く,「うれしかった」,「面白かった」も,頻度が多いです.最近は,「つらかった」という表現も出てきました.

自分で2時間のスケジューリングができるようになった

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ヨッシーくんの紹介

息子は,中学2年生で,特別支援学級に在籍しています。息子のことを紹介します。今は,「何分後」がわかったことで,やりたいこと,やるべきことを,後の予定に組み込めるようになってきました。長いスパンでの時間の理解が進んできました。

ヨッシーくんのできること、できないこと

よっしーくんのスライド

強みは,「何分後」が5分単位で分かるようになってきたことです。また,「月間スケジュールから,一日を通したスケジュール,そして,細かい2時間というスケジュール」という全体から細部まで見通した上でのスケジューリングができるようになってきました。

そのため,変更が可能になり,「今日はできないけど明日に伸ばそう」とか,「午前中は,できないけど夜に変更しよう」という交渉ができるようになりました。さらに,交渉に応じることができるようになったことで,自分の希望を主張することができることを重要視したいと思っています。

 弱みです。1つは,予めの交渉には応じられるのですが,実際の場面で突然変更があるから変更しようと持ちかけてもまだ難しいことが多いです。2つめは,間に合わないという事態が実際には多いのですが,そんなとき,「時間が間に合わないんだけど,どうしようか」という交渉をすることが難しく,母の方から「どうする?」と持ちかけていることです。

ヨッシーくんの機能的な目標

よっしーくんのスライド

 機能的な目標は,時計では,2nd「2時間のスケジュールを立てることができる」に取り組んでいます。これを始めたのが2010年2月頃からですから,2年以上やっているんですけど,内容が深くて,続けていく必要があるなと考えています。当初は,言葉のとおり「2時間の長さを理解する」ことをメインにやっていましたが,2年以上,経った今は,他者を配慮して計画を立てる能力も合わせて必要だと思っています。

システム理論

よっしーくんのスライド

システム理論の位置づけは,現在J☆sKepが3.1点で,流動的システムにトライしている最中です。

療育の実際

時計の逆算

よっしーくんのスライド

次に,療育の様子をご紹介します。逆算に関しては,自ら付せんにしてある時計とタイマーを活用して,逆算をしています。出かける時間から,逆算をすることができます。何時何分に出掛ける,それまでに何が何分くらいでできるかを逆算して,タイマーを使うことをしています。出発時間のギリギリまで作業をするのではなく,5分から10分前に終了するようにしています。

2時間の壁スケジュール

よっしーくんのスライド

  次の2時間の壁スケジュールは,自らスケジューリングして確認することを目標にやっています。母から「スケジュールの時間だから」とか,「確認して」という指示が入らなくても自分でできるように,「俺のスケジュールだ」という意識でやってもらいたいという気持ちを込めて取り組んでいます。

2時間を意識して,予定の変更などを交渉して取り組む数直線のスケジュールというイメージです。「母のスケジュールを並列して意識させる」,「状況に合った休憩を適切に組み込む」,「その活動に,自分は何分位必要かを知る」ことの3点が注意して,実行するようにして取り組んでいます。

よっしーくんのスライド

たすくの数直線のスケジュールは,だいぶ長い間取り組んでいます。ここ1年位の間に,他者に配慮させるためには母のスケジュールも並列して示した方がいいと考えました。下に母のスケジュールを貼っています。母も同時に,勉強を一緒にやってくれる時もあるし,自分が遊んでいる間に,母は洗濯物をたたんでいるとか,食器洗いをしているとか,そういう状態を
見せています。

ヨッシーと一緒にやるときには,同じカードが貼ってあります。一緒に勉強が終わってヨッシーがカードをはがすと,母もカードをはがして「よーし終わったねー」と言います。その後,ヨッシーが遊んでいる横で洗濯物たたみを終えたら「洗濯物たたみ終わり!」とつぶやいてカードをはがしています。

朝のルーティーン

よっしーくんのスライド

  朝のルーティン(決まった流れ)についてです。withスケジュールに母のスケジュールと本人のスケジュールを並列に書いています。朝のルーティンで他者に配慮した順番交替の練習をしています。自分は待っている間,別のことをして効
率よく進めることに取り組んでいます。平日にやると学校に行けなくなってしまうので,負荷をかけやすい休日にチャレンジしています。

よっしーくんのスライド

スケジュール上は,自分の洗顔の方が先です。けれども,「お母さん,先に洗顔どうぞ」と言ってもらって,譲ってもらって,「ありがとう,じゃ,先にやらせてもらうね。それで,その間何するの?」って言ったら,「オレ,先にトイレ行ってくる」って言うからそっちを先にやってもらうこともしています。母の洗顔が終わったら「洗顔終わりました。次どう
ぞ」って言って,「ありがとう」って言わせて,順番を交替してもらっています。

平日は,本人が先に洗顔をするんですけど,私がわざわざ「洗顔お先にどうぞ」って言うようにしています。それで交替しているというイメージを植え付けて,母にも時間がある,自分にも時間がある,いかに効率よくやっていくかを考えることに取り組んでいます。

外出先での交渉

よっしーくんのスライド

  次は,外出先での交渉です。これが時計の学習における本番です。流動的な中で,般化できているか,課題はどこかを探すために交渉をしています。

チャレンジ1年目

よっしーくんのスライド

  1つめは,外出先での交渉です。これは平成22年。母はまだ,交渉の初心者で,命令っぽくなっていました。この頃,電車のこだわりが強くて,たすくの帰りに,○○に乗って帰るからと,その電車が来るまでに延々1時間も2時間も待ち続けるという頃です。「△△には乗るけれど,○○には乗りません」という具合に,交渉というより命令っていう感じで,「お母さんはそんなには待てないよ」ということをこのスケジュールで頑張っていました。

チャレンジ2年目

よっしーくんのスライド

  次に,平成23年になりますと,少しずつ交渉らしくなってきて,「写真撮影,何時までやる?」と聞いて本人の字で○時○分と書いています。「いいよ。15分までならいいけど,20分は勘弁してね」みたいな交渉が成立してきました。「16時30分にカラオケだから,その間自転車屋さんに行かせて」みたいな交渉をしています。「カラオケは予約してあげる。お母さんは
自転車屋さんに行きたいから一緒に行ってね。でも,30分しかないからね。」というような時計を基にした交渉をやっていました。

チャレンジ3年目

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  平成24年になりますと,交渉が楽になって来ました。この頃,最寄り駅の始発に乗りたいというこだわりがありました。駅に到着する時間によっては,始発じゃあ早すぎたり遅すぎたりするんですね。始発なんて1時間に1本か2本しかないんだから,来た電車に乗ってほしいのです。そこでのこだわりと,あとは自分が何時に着かなければいけないからっていう逆算がで
きるようになったので,「仕方ないか,始発じゃなくても。まあ,次に時間があるときは始発に乗ろう。今日みたいに先生が○時に待っているから」みたいな「スタート時間が決まっているから遅れる訳にもいかないし,早すぎてもいけない。先生に合わせなくちゃいけない。始発じゃなくても乗って」っていう交渉に応じられるようになって花丸がついています。

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  最近は,時刻表でも交渉できるようになってきて,「これに乗りたいよ」「どうしてこれに乗りたいの?」「この電車の音が嫌だから」「え~?じゃ,それでもいいけど,そのかわり,家に着いたら3Dで遊ぶのなしになっちゃうよ。遅くなっちゃうから。」,「それなら早く乗るよ」など,そういう先のイメージも考えて,時間には限りがあることを時刻表でもイメージして,外出先で交渉できるようになりました。

自分で2時間のスケジューリングが出来るようになった

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  指導してきた結果です。時計の逆算,2時間の枠内でのスケジューリングがほぼできるようになりました。ただ,課題として,突然の変更への対応がやはり難しいので,特に他者との関係性を重視した交渉力の向上が必要だと思っています。目標は,セルフアドボカシーができる人になってほしいと思っています。自己権利擁護っていう言葉だけ聞くと,自分の我を通すみたいなイメージがあるかもしれませんが,社会に受け入れられるような方法で自分の中の悪魔と天使を葛藤させて,その場に合ったような形の自己権利擁護ができる人になってほしいなと思っています。

質疑応答

Q. 朝,どのタイミングでスケジュールを立てるのですか?

A. ご想像のとおり,朝食が終わったら,グダグダする。うちはYoutubeを延々と見ちゃいます。ちょっとのんびりしたい気持ちは分かるんですけど。ご飯が終わったら,母と一緒に鳥の動画を見たいのです。3分くらいです。「お母さん,Youtube始めますよ」「はーい」って言って,3分お付き合いします。それが終わると「面白かったね!さあ,メリハリを付けよう!」って言ってスケジュールをやります。そのパターンで切り替えます。

Q. うちは朝くじけると一日崩れます。「自ら」というモチベーションをどうやって持ってくるのですか?

A. 朝は時間に限りがあるから,「自ら」を待っていたら一週間経っちゃう。動画を一緒に見るということで切り替えられるというのを平日も休日も同じパターンで切り替えています。休みの日はのんびりしてもいいかなと思うこともありますが,母も心を鬼にして,「これ終わってからのんびりしようね」っていうふうにしておかないと,休日はのんびりして,平日にしっかり切り替えるのは難しい。

いつか,「いいじゃん,今日はのんびりして」と言える,もうちょっと時間の感覚がわかれば,そういうゆるみも出てくるだろうから,それは10年,20年先にできるようになってほしいけれど,今は,「自ら」を伸ばすために平日も休日も同じにしています。

Q.  一日の流れをいつ立てるのですか?

A. マンスリーで大まかに今日やることがわかっている。それを前日に「明日は平日ですか,休日ですか」から始まって,「休日のスケジュール」と「本人が言ったら「そうだね休日だね」と言ってはじめる。マンスリーから,デイリー,そして細部へと進めます。

Q. どうやって持ち歩いているのですか?

A. 持ち歩くときはWithスケジュールを使っています。たすくで売っているものです。

Q.  スケジュールを作りっぱなしになりがちなのですが,どうでしたか?

A. 以前はチェックしたがらないときもありました。特に外では,騒音があるし,先が気になるし,かゆいなど,気になることが多すぎて,ものすごいストレスですよね。だけど,「チェックした方があなたのためになるから」というのを入れるために,「ほら,なんとか線に乗るんだよね。あと,何と何したら乗るの?」とチェックをせざるを得ない状況を作って,チェックする癖を付けるのです。チェックボックスを見て,赤ペンを持ったら手が動くみたいなところまで持って行っちゃいました。

Q. 壁のスケジュールでやる意味を教えてください。

A. 変更があるところには「!」を貼っています。同じところにいつも貼っています。いつも9時に寝るっていう約束があって,勉強で押せ押せになると,変更をしなければならなくなるんです。15分を10分にするとか。風呂のスイッチを入れるっていうのもあるんですが,インターネットをする前に風呂のスイッチを押しておくと効率がいいのです。早くお風呂に入らなくちゃいけないときは,もっと早くスイッチを押す必要がある。この交渉を勉強が終わった時点でするようにしています。

「いつも同じところで交渉するからね」ということを入れていて,同じパターンで交渉する練習をしています。「時間が足りないときには交渉が必要なんだね」,「あなたは交渉に応じられて,すばらしいよ」ということをここで練習して本番に備えています。