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たすくからのお知らせ

すぐ手が出てしまう息子が、自分で考えて気持ちを伝えられるようになった

2013年11月28日 木曜日 / カテゴリ:家庭の療育体験談

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お子様の紹介

息子は現在小学校の個別支援学級に通う6年です。今日は主に,「知覚」と「判断」に注目してご紹介します。しっかり見て,情報を処理させるということに取り組んできました。

1年前の息子の様子

一年前のJ☆sKepsTMは2.6点。視点が定まらず,視覚的な情報を得ることが苦手でした。また聞き取った言葉を頭に留め置くことが苦手で,情報が処理しきれず,手が出てしまうこともありました。 たすくの先生たちと「指示理解・セルフマネージメント・注視物の選択に注目しよう」と決め、必要なときに必要な情報に注目することができるように視覚機能を高めることにトライしてきました。

スライド_れおくん

J☆sKepsTM2.6~3.3点になって,静態的システムから流動的システムのほうに移行しますが,実際は,学校生活の中で変更なども多く,常に流動的な環境にいます。

取り組む機能的な目標は,J☆sKepsTMの点数から,「三種の神器」「アカデミック」は1st~2nd,「生活スキル」「インディペンデント」「社会性」は1stに取り組みました。

スライド_れおくん

「知覚(Perception)」では,視点が定まらず,視覚的な情報が得られないので,言葉が頭に留まらない。そのため聴覚と視覚から得た情報をコンビネーションさせることが難しくて,正しい判断ができません。それで心的処理ができないので,防衛反応として「攻撃してしまえ」と判断して,手が出てしまうことがあります。

 手を出してしまったことで,相手も嫌な気持ちになりますし,息子自身も「たたいてしまった…」と落ち込んで傷ついてしま う。そんな風に,サイクルが正しく回らないという状態でした。

  特に学習の中で見られたのは,新しい問題とか,足し算で少しパターンを変えて出題すると,しっかりと「見る」ことができないので,ぱっと断片的に目に入った情報しか取れず,さらに情報を留め置くことができないので,すぐに「やだ」と拒否をしたり,投げだしてしまうことがよくありました。

療育の実際(知覚)

スライド_れおくん

実際に知覚(Perception)で取り組んだのは,情報を入力しやすくするために,視点を定める練習です。

<教材>
1.バランスボール
2.バランスディスク
  センター南教室ができてからは,週に2~3回身体作りに取り組み,バランスディスクは家での宿題でも取り組みました。

バランスボール

スライド_れおくん

昨年のアセスメントのときは,正面にいる松永先生を見続けることも,姿勢の保持も難しかったです。   姿勢の保持ができるようになったら,ボールに座って,上下にジャンプしながら,静止した対象物を見続けることに取り組みました。

<ポイント>
◎今やること以外の刺激をなくす
◎「○○を見て(ex.お母さんの目を見て)」と望ましい目標をあらかじめ伝えてから取り組む
◎できていることをフィードバック(ex.足を閉じている,口を閉じているなど)

バランスディスク

スライド_れおくん

上の写真は一年前です。この時は,身体をひねることも難しかったのですが,後ろから腰を支えてもらうことで,視点を定めることができました。

 

スライド_れおくん

現在の様子です。トーマスが好きなので,トーマスのシールを母の指先に貼って,「これを見てね」と言うことで,視点を定めることができています。

療育の実際(判断)

スライド_れおくん

次に「Judgment・Programming(判断の練習)」についてですが,情報に注目することと並行して,情報を頭に留めおくことの練習に取り組みました。

<教材>
1.暗算
2.ブログ

暗算

スライド_れおくん

暗算は,ワーキング・メモリに配慮し,音韻ループのみの問題と,視空間メモ+音韻ループの問題に分けて取り組みました。

【例】
  「15+2」と「34+2」という問題で,どちらも同じ「2桁+1桁」の問題ですが,「34+2」のほうを何度も聞き返してくることが多かったです。
  「15+2」は「じゅう・ご・たす・に」と4音です。これだと音韻のみでできたのですが,「34+2」になると,「さん・じゅう・よん・ たす・ に」で全部で5音の問題になります。これだとちょっと難しかったり確実ではなかったりしたので,やはり何度も聞き返してきました。

  次に,2桁+2桁の問題で,「34+25」になると,全部で7音の足し算になり,これは音韻ループだけでは難しくて,視空間メモがあると解くことができました。

スライド_れおくん

  これで情報を留め置ける限界がわかったので,5音の足し算からスタートして取り組んできました。

  同じ5音でも,「20+15(に・じゅう・たす・じゅう・ご)」という2音+2音の場合と,「35+4(さん・じゅう・ご・たす・よん)」の3音+1音,「2+36(に・たす・さん・じゅう・ろく)」の1音+3音とパターンがあり,パターンを変えると切り替えが難しかったので,2音+2音ならそれを続けて,次に3音+1音,1音+3音と出題し,最終的には全てのパターンを取り混ぜて計算をしていきました。 

スライド_れおくん

 ここでのポイントは,まず出題の際の注意喚起です。

目が合ったときに問題を言う,もしくは,息子のほうから「いいよ」と合図をくれたとき,もしくはこちらの方から「いい?」と確認をして,しっかり聞く態勢になってから問題を伝えるということに注意しました。

  音韻のみの暗算が難しいのは,指示が聞き取れても計算ができない場合と,式自体が留め置けない場合があります。

  「34+25」のときには,『34+なに?』とか,『34+15?』と,聞き返してきて,後ろの数を留め置くことが難しかったです。

  その時は,カードを見せて,自分で『34+25は?』と読み,一旦カードを伏せるんですが,答えが出ると,『確認するよ』とカードを見せて,『34+25は59』と,式と答えを必ず読ませるようにしました。

昨年と比べると,式を留め置けるようになりましたし,先生のほうもしっかりと見るようになりました。

ブログ

スライド_れおくん

 次に取り組んだのはブログです。ブログはまず単語の入力から始めました。イラストがあり,その下にアルファベット,その下に仮名を書いたものを使いました。

  最初は留め置く時間を短くしてあげる配慮と,眼球運動で目をキョロキョロさせて情報を得ることがとても難しいので,目の動きにも配慮して,このときはパソコンではなく,入力する画面と,キーボードが一つの画面上にあるタブレット端末(ipad)を使って入力を進めていきました。

  次に,2~3語文ですが,これもipadを利用して,まず自分で文を読ませて,さらにつぶやきながら入力することを意識させました。

  アルファベットでの入力もだいぶ慣れてきたと思いますし,留め置く時間もすこしずつ長くなって,それに伴って目の動きも少し改善してきたので,今年に入ってから,パソコンでのブログの入力を始めました。

内容については,ブログを書く直前のことしか書かないことが多いので,「学校のこと・家のこと」など簡単な選択肢を見せて,そこから選んで内容を書くようにしていました。そしてブログを始めて半年以上経ち,最近は「今日これ書く!」「この写真使いたい」など自分から提案してくれることもあります。

  入力に際しては,療育でいただいたフォーマット(いつ・誰が・どこで・どうした)を利用して下書きをさせていますが,これを直接入力するのは難しいので,私のほうで,文節ごとに区切って,わかりやすくなるよう清書をしています。それをスラッシュごとに読み上げ,留め置いて,入力し,最後に見本と同じように打ち込めたか確認します。

 このようなスモールステップで留め置く量を増やしていきました。

指導してきた結果、今は・・・

スライド_れおくん

  今は,暗算のほうは,2桁+2桁で繰り上がりが2回ある計算に取り組んでいます。かなり難しいです。視空間メモが活用できなかったときには音韻ループが頭の中で消えてしまうので,視空間メモと音韻ループのバランスを整えるために,式を聞いて,それを筆算で書いて,解くことに取り組んでいます。

  ブログでは,文節ごとにスラッシュを入れて,留めおいて入力することを続けています。

スライド_れおくん

指導してきた結果、
・人や物によく注目できるようになりました。
・困った時,少し考えて行動するようになってきました。
(電車に乗り遅れたら,次の電車に乗ろう!と切り替えられるようになったり,電車賃が足りなくなったときに,自分から「歩いて行くよ」と決めたり)
・嫌なことがあった時に,とっさに手がでずに,考えることができるようになってきました。
(『叩いたら,痛い?』→『うん,痛いよ』と聞くと→拳を下げる)

スライド_れおくん

【現在のPerception first cycle (知覚サイクル)】
情報が頭に留まり,注目できるようになってきた

嫌なことがあっても,冷静に判断できるようになってきた
「叩くと痛いから,叩かずに言葉で返そう」

「待って」「やめてよ」と言える

笑顔で分かり合える
 というサイクルがうまく回るようになり,それが社会性にもつながって,伸びてきたと感じます。

これまで療育でやってきたことに加えて,センター南教室が近くにできたことで,この1年本当によく通いました。その取り組みのおかげもあったと思うのですけど,J☆sKepの点数も思ったよりも伸びて,生活の中でも分かり合えることがとても増えてきました。

  ただ,状況によっては冷静には判断できないこともありますので,これからは,あふれた時や,怒りをどうコントロールするかが課題になるので,これからもそれをふまえて,スモールステップでがんばっていきたいと思います。

質疑応答

Q. 身体の改善とともに,情報の留め置きや,「見て」に応える時間もだんだん長くなってきたと思いますが,身体づくりと,「留め置く」サイクルと,どちらを重点的にやってこられましたか?

A. どちらも並行してやってきました。身体づくりをしないと問題を見れないし,どちらかを重点的に,ということでは,できなかったと思います。

Q. おうちで身体づくりや勉強をする際,一日のノルマを決めていますか?

A. 時間ではなく、問題数で決めています。問題の難しさによって,30分だったり1時間だったりするので,「プリント何枚」という決め方です。ブログは毎日書こうとしています。

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