News & Topics
たすくからのお知らせ

自分で2時間のスケジューリングができるようになった

2012年11月23日 金曜日 / カテゴリ:家庭の療育体験談

教材マスターの集いMAXアイキャッチ.001

ヨッシーくんの紹介

息子は,中学2年生で,特別支援学級に在籍しています。息子のことを紹介します。今は,「何分後」がわかったことで,やりたいこと,やるべきことを,後の予定に組み込めるようになってきました。長いスパンでの時間の理解が進んできました。

ヨッシーくんのできること、できないこと

よっしーくんのスライド

強みは,「何分後」が5分単位で分かるようになってきたことです。また,「月間スケジュールから,一日を通したスケジュール,そして,細かい2時間というスケジュール」という全体から細部まで見通した上でのスケジューリングができるようになってきました。

そのため,変更が可能になり,「今日はできないけど明日に伸ばそう」とか,「午前中は,できないけど夜に変更しよう」という交渉ができるようになりました。さらに,交渉に応じることができるようになったことで,自分の希望を主張することができることを重要視したいと思っています。

 弱みです。1つは,予めの交渉には応じられるのですが,実際の場面で突然変更があるから変更しようと持ちかけてもまだ難しいことが多いです。2つめは,間に合わないという事態が実際には多いのですが,そんなとき,「時間が間に合わないんだけど,どうしようか」という交渉をすることが難しく,母の方から「どうする?」と持ちかけていることです。

ヨッシーくんの機能的な目標

よっしーくんのスライド

 機能的な目標は,時計では,2nd「2時間のスケジュールを立てることができる」に取り組んでいます。これを始めたのが2010年2月頃からですから,2年以上やっているんですけど,内容が深くて,続けていく必要があるなと考えています。当初は,言葉のとおり「2時間の長さを理解する」ことをメインにやっていましたが,2年以上,経った今は,他者を配慮して計画を立てる能力も合わせて必要だと思っています。

システム理論

よっしーくんのスライド

システム理論の位置づけは,現在J☆sKepが3.1点で,流動的システムにトライしている最中です。

療育の実際

時計の逆算

よっしーくんのスライド

次に,療育の様子をご紹介します。逆算に関しては,自ら付せんにしてある時計とタイマーを活用して,逆算をしています。出かける時間から,逆算をすることができます。何時何分に出掛ける,それまでに何が何分くらいでできるかを逆算して,タイマーを使うことをしています。出発時間のギリギリまで作業をするのではなく,5分から10分前に終了するようにしています。

2時間の壁スケジュール

よっしーくんのスライド

  次の2時間の壁スケジュールは,自らスケジューリングして確認することを目標にやっています。母から「スケジュールの時間だから」とか,「確認して」という指示が入らなくても自分でできるように,「俺のスケジュールだ」という意識でやってもらいたいという気持ちを込めて取り組んでいます。

2時間を意識して,予定の変更などを交渉して取り組む数直線のスケジュールというイメージです。「母のスケジュールを並列して意識させる」,「状況に合った休憩を適切に組み込む」,「その活動に,自分は何分位必要かを知る」ことの3点が注意して,実行するようにして取り組んでいます。

よっしーくんのスライド

たすくの数直線のスケジュールは,だいぶ長い間取り組んでいます。ここ1年位の間に,他者に配慮させるためには母のスケジュールも並列して示した方がいいと考えました。下に母のスケジュールを貼っています。母も同時に,勉強を一緒にやってくれる時もあるし,自分が遊んでいる間に,母は洗濯物をたたんでいるとか,食器洗いをしているとか,そういう状態を 見せています。

ヨッシーと一緒にやるときには,同じカードが貼ってあります。一緒に勉強が終わってヨッシーがカードをはがすと,母もカードをはがして「よーし終わったねー」と言います。その後,ヨッシーが遊んでいる横で洗濯物たたみを終えたら「洗濯物たたみ終わり!」とつぶやいてカードをはがしています。

朝のルーティーン

よっしーくんのスライド

  朝のルーティン(決まった流れ)についてです。withスケジュールに母のスケジュールと本人のスケジュールを並列に書いています。朝のルーティンで他者に配慮した順番交替の練習をしています。自分は待っている間,別のことをして効 率よく進めることに取り組んでいます。平日にやると学校に行けなくなってしまうので,負荷をかけやすい休日にチャレンジしています。

よっしーくんのスライド

スケジュール上は,自分の洗顔の方が先です。けれども,「お母さん,先に洗顔どうぞ」と言ってもらって,譲ってもらって,「ありがとう,じゃ,先にやらせてもらうね。それで,その間何するの?」って言ったら,「オレ,先にトイレ行ってくる」って言うからそっちを先にやってもらうこともしています。母の洗顔が終わったら「洗顔終わりました。次どう ぞ」って言って,「ありがとう」って言わせて,順番を交替してもらっています。

平日は,本人が先に洗顔をするんですけど,私がわざわざ「洗顔お先にどうぞ」って言うようにしています。それで交替しているというイメージを植え付けて,母にも時間がある,自分にも時間がある,いかに効率よくやっていくかを考えることに取り組んでいます。

外出先での交渉

よっしーくんのスライド

  次は,外出先での交渉です。これが時計の学習における本番です。流動的な中で,般化できているか,課題はどこかを探すために交渉をしています。

チャレンジ1年目

よっしーくんのスライド

  1つめは,外出先での交渉です。これは平成22年。母はまだ,交渉の初心者で,命令っぽくなっていました。この頃,電車のこだわりが強くて,たすくの帰りに,○○に乗って帰るからと,その電車が来るまでに延々1時間も2時間も待ち続けるという頃です。「△△には乗るけれど,○○には乗りません」という具合に,交渉というより命令っていう感じで,「お母さんはそんなには待てないよ」ということをこのスケジュールで頑張っていました。

チャレンジ2年目

よっしーくんのスライド

  次に,平成23年になりますと,少しずつ交渉らしくなってきて,「写真撮影,何時までやる?」と聞いて本人の字で○時○分と書いています。「いいよ。15分までならいいけど,20分は勘弁してね」みたいな交渉が成立してきました。「16時30分にカラオケだから,その間自転車屋さんに行かせて」みたいな交渉をしています。「カラオケは予約してあげる。お母さんは 自転車屋さんに行きたいから一緒に行ってね。でも,30分しかないからね。」というような時計を基にした交渉をやっていました。

チャレンジ3年目

よっしーくんのスライド

  平成24年になりますと,交渉が楽になって来ました。この頃,最寄り駅の始発に乗りたいというこだわりがありました。駅に到着する時間によっては,始発じゃあ早すぎたり遅すぎたりするんですね。始発なんて1時間に1本か2本しかないんだから,来た電車に乗ってほしいのです。そこでのこだわりと,あとは自分が何時に着かなければいけないからっていう逆算がで きるようになったので,「仕方ないか,始発じゃなくても。まあ,次に時間があるときは始発に乗ろう。今日みたいに先生が○時に待っているから」みたいな「スタート時間が決まっているから遅れる訳にもいかないし,早すぎてもいけない。先生に合わせなくちゃいけない。始発じゃなくても乗って」っていう交渉に応じられるようになって花丸がついています。

よっしーくんのスライド

  最近は,時刻表でも交渉できるようになってきて,「これに乗りたいよ」「どうしてこれに乗りたいの?」「この電車の音が嫌だから」「え~?じゃ,それでもいいけど,そのかわり,家に着いたら3Dで遊ぶのなしになっちゃうよ。遅くなっちゃうから。」,「それなら早く乗るよ」など,そういう先のイメージも考えて,時間には限りがあることを時刻表でもイメージして,外出先で交渉できるようになりました。

自分で2時間のスケジューリングが出来るようになった

よっしーくんのスライド

  指導してきた結果です。時計の逆算,2時間の枠内でのスケジューリングがほぼできるようになりました。ただ,課題として,突然の変更への対応がやはり難しいので,特に他者との関係性を重視した交渉力の向上が必要だと思っています。目標は,セルフアドボカシーができる人になってほしいと思っています。自己権利擁護っていう言葉だけ聞くと,自分の我を通すみたいなイメージがあるかもしれませんが,社会に受け入れられるような方法で自分の中の悪魔と天使を葛藤させて,その場に合ったような形の自己権利擁護ができる人になってほしいなと思っています。

質疑応答

Q. 朝,どのタイミングでスケジュールを立てるのですか?

A. ご想像のとおり,朝食が終わったら,グダグダする。うちはYoutubeを延々と見ちゃいます。ちょっとのんびりしたい気持ちは分かるんですけど。ご飯が終わったら,母と一緒に鳥の動画を見たいのです。3分くらいです。「お母さん,Youtube始めますよ」「はーい」って言って,3分お付き合いします。それが終わると「面白かったね!さあ,メリハリを付けよう!」って言ってスケジュールをやります。そのパターンで切り替えます。

Q. うちは朝くじけると一日崩れます。「自ら」というモチベーションをどうやって持ってくるのですか?

A. 朝は時間に限りがあるから,「自ら」を待っていたら一週間経っちゃう。動画を一緒に見るということで切り替えられるというのを平日も休日も同じパターンで切り替えています。休みの日はのんびりしてもいいかなと思うこともありますが,母も心を鬼にして,「これ終わってからのんびりしようね」っていうふうにしておかないと,休日はのんびりして,平日にしっかり切り替えるのは難しい。

いつか,「いいじゃん,今日はのんびりして」と言える,もうちょっと時間の感覚がわかれば,そういうゆるみも出てくるだろうから,それは10年,20年先にできるようになってほしいけれど,今は,「自ら」を伸ばすために平日も休日も同じにしています。

Q.  一日の流れをいつ立てるのですか?

A. マンスリーで大まかに今日やることがわかっている。それを前日に「明日は平日ですか,休日ですか」から始まって,「休日のスケジュール」と「本人が言ったら「そうだね休日だね」と言ってはじめる。マンスリーから,デイリー,そして細部へと進めます。

Q. どうやって持ち歩いているのですか?

A. 持ち歩くときはWithスケジュールを使っています。たすくで売っているものです。

Q.  スケジュールを作りっぱなしになりがちなのですが,どうでしたか?

A. 以前はチェックしたがらないときもありました。特に外では,騒音があるし,先が気になるし,かゆいなど,気になることが多すぎて,ものすごいストレスですよね。だけど,「チェックした方があなたのためになるから」というのを入れるために,「ほら,なんとか線に乗るんだよね。あと,何と何したら乗るの?」とチェックをせざるを得ない状況を作って,チェックする癖を付けるのです。チェックボックスを見て,赤ペンを持ったら手が動くみたいなところまで持って行っちゃいました。

Q. 壁のスケジュールでやる意味を教えてください。

A. 変更があるところには「!」を貼っています。同じところにいつも貼っています。いつも9時に寝るっていう約束があって,勉強で押せ押せになると,変更をしなければならなくなるんです。15分を10分にするとか。風呂のスイッチを入れるっていうのもあるんですが,インターネットをする前に風呂のスイッチを押しておくと効率がいいのです。早くお風呂に入らなくちゃいけないときは,もっと早くスイッチを押す必要がある。この交渉を勉強が終わった時点でするようにしています。

「いつも同じところで交渉するからね」ということを入れていて,同じパターンで交渉する練習をしています。「時間が足りないときには交渉が必要なんだね」,「あなたは交渉に応じられて,すばらしいよ」ということをここで練習して本番に備えています。

Share Button