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たすくからのお知らせ

やる気を失っていた息子が、姿勢を整えることで、自尊心を取り戻した

2013年11月28日 木曜日 / カテゴリ:家庭の療育体験談

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じーくんの紹介

息子は,地域の小学校の特別支援級の4年生です。療育を始めて2年になりますが,この2年間のお話をお届けしたいと思います。

療育を始めた時の様子

スライド_じーくん

療育を始めたころ、じーくんにはこんな様子でした。
・姿勢保持が難しく,椅子に座り続けることが困難。(前庭覚,固有受容覚が低反応)
・座るとき,背もたれに寄りかかり,左手は下に落ちていた。
・見本を注視するのが難しい。
・不全感があり(これが,じーくんのポイントになります),コントロールの放棄が難しい。
・J☆sKepsTM2.4点。学習態勢・セルフマネージメント・表出性のコミュニケーションに注目させてスタート。

システム理論

スライド_じーくん

J☆sKepsTMが2.4点なので,本来ならば静態的システムの中でゴールをきちんと決めてあげて,わかりやすく手取り・足取りという環境が望ましいところではあるのですが,この頃,じーくんは発達がとてもでこぼこで,学校では,でこぼこの中でも「できるところ」を見られることがとても多かったです。ですので,流動的システムの中で,目標や環境が常に変わってしまう,難しい環境の中で過ごしていて,できることと求められることのちぐはぐさから,本人はこの時とても苦しんでいたのではないかと振り返ります。

スライド_じーくん

取り組む目標としては,J☆sKepsTM2.4点ですので,「三種の神器」,「アカデミック」,「手を育てる」に注目してきました。

スライド_じーくん

Perception first cycle(知覚サイクル)で考えていくと,まず,座ることが難しかったです。姿勢が崩れてしまうために,「見る」「見つづける」ことが苦手でした。ですので,ここで姿勢保持のトレーニングを始めました。

  次にやっぱり見本などを,見つづけることができず,「できないな,なんでかな」と少しイライラが募ってきます。

  そして,根がまじめな子で,やろうとはしますが,字が大きくなってしまったり,枠もあってないような字を書いていたりしました。だんだんいやになって,「これならもうこの課題は,おれは,おれの意思で,やらないんだ」という発想になってしまい,ひどい時には鉛筆を投げてしまったり,私に攻撃してきたりすることも多かったです。

  サイクルが回っていないことはないのですが,不自然なかたちで,正しいサイクルが回ってはいないなというかんじでした。

療育の実際

バランスボール

スライド_じーくん

Perception(知覚)を支える基礎力となる「姿勢保持」のための身体づくりに取り組みました。
1.ボールでジャンプ
2.ボールに座ってバランスをとる
3.ボールに座って身体を固める
4.ボールを使ってひこうき
5.ボールになろう
  サイクルの悪循環を止めるために,家庭でも療育でも,これらの身体づくりに取り組みました。

スライド_じーくん

 家で パソコンに向かっている様子ですが,バランスボールを椅子代わりにしています。この時,パソコンで見ているのはYoutubeなのですが,本人は注視しているなんていうつもりは全くなく,バランスボールに乗っています。

スライド_じーくん

【左の写真:療育を始めたころ】
  完全にお尻が落ち,手が伸びきってしまい,このままダーッと崩れてしまいそうです。

【右の写真:センター南に週に1回は通っている現在の様子】
  身体がきちんと固まっていますし,体幹が鍛えられてきて,自分でバランスを取ろうとしています。「脇閉めてていいね」など声かけをしてモチベーションもアップさせつつ行っています。

図形書き

スライド_じーくん

 療育のほうでは,図形書きに取り組みました。ステップとして、
1.椅子を厳選しました。
2.道具を厳選しました。(三角シャープペン→ステッドラー→シャープペン+ぷにゅグリップ)
3.左手を添える・シャープペンを持つ・書くことから始めました。(1つの見本を見て,書く)
4.実行機能に配慮して,すべきことを約束しました。(足を着く→左手を置く→シャープペンの持ち方)
5.サイズを調整する為に,目印として上に線を引きます。

道具の変遷

スライド_じーくん

  三角シャープペンは,じーくんの場合は,どうしても持つと親指がずり上がってきちんと持てませんでした。これだと 少し細かったようです。

  次にステッドラーシャープペンは見た目からかっこよくて,すぐに好きになりました。持ってみると,グリップの部分が太くて持ちやすく,三角の部分にきちんと指を合わせて置くことができました。「おれでもこれだったら持てる,書けるぞ!」という様子を見て,私も,道具選びの大切さを学びました。ただ,これの唯一の難点が,太いので小さい字が書けないんです。

 それで,また三角シャープペンに戻しましたが,じーくんにはやっぱりうまく持てませんでした。

 そこで,キャンパスペンシルに,ぷにゅグリップをつけると,指も合わせやすく,感触もよいということで,我が家ではヒットしました。

  このように何段階も経て,道具を厳選していきました。

スライド_じーくん

  さきほど「見本を注視」ということを言いましたが,右側に取り出してあるのは,単語帳です。図形の書き順を書いて,一番注視しやすいところに見本として置きました。

取り組む前のお約束

スライド_じーくん

また,私が彼と触れ合うときのエチケットとして,「お約束」ということがあります。この図形を書くときの場合は, 1.足を着く 2.左手を置く 3.シャープペンの持ち方(いい持ち方)を確認します。そうやって,すべきことを明確にすると,どうやら身体への指示が出しやすいようです。

  右上の写真(以前の写真)を見ていただくと,左手が落ち,お尻がずれ,背もたれに寄っかかり,きちんと座れていませんでした。

出来るようになったこと

スライド_じーくん

じーくんが出来るようになったことは、
・姿勢保持をして椅子に座り、書きやすい姿勢で取り組めるようになった。
・見本を中止できるようになった
・文字をそろえて書くことが出来るようになった。
・Perception-first Cycle(知覚サイクル)が回るようになり、不全感がなくなった。

という進歩が見られました。今はワーキングメモリを重視する課題に取り組んでいます。

書字の変化

スライド_じーくん

【2011年の書字】
  一番左の写真が,2011年のときの字です。枠はあってないようなものです。字を書くのが嫌いなので,「TBS」とか「日 本テレビ」とか,本人のモチベーションが上がる言葉を書いていました。
  図形は,このとおり怒りが伝わってくるような書き方です。

【2012年の書字】
  ステッドラーを使い始めて,だんだん書くことに苦手感が無くなってきたころです。この時に書いているのはまだ,「テツ&トモ」など,本人の好きな単語や将来の夢などを選んでいます。
  図形は,上に線を引いてあって,「この中に書くんだ」と,枠がなんとなく捉えられるようになってきました。

【2013年の書字】
  もう好きな字を書いているわけではなく,獲得していくべき実用的な言葉,こちらが提示した言葉も書けるようになってきました。
  図形はだんだんそろってきて,「何個書くか」というお約束もできるようになりました。

まとめ

スライド_じーくん

【自己意識と社会性】に立ち戻ってみると,Perceptionでは,姿勢が整ってきたので,注目ができるようになってきて,枠や見本がわかるようになります。「わかったぞ,モデルと同じに書くぞ」と本人が思って書くと,母からも「あ,できたね!じーくんかっこいいね!見本と同じじゃん!」と言われて,とても嬉しくなってきます。「じーくん今日は絶好調だね!」という言葉が一番好きみたいです。

 最後に,「見て,見本と同じじゃない?書き順もすごくよかったよ!」と言いながら振り返ります。

  こうして,最初はでこぼこしていたサイクルが,最近ではきちんと望ましいかたちで回るようになってきて,結果,不全感がなくなってきたのかなと思います。

  今は,ステップアップして,ワーキング・メモリを育てる課題に取り組んでいます。図形を見て,頭に留め置いて,書こうとする。見本は近くにはなく,ワーキング・メモリで留めてやっています。まだなかなか大変で,苦しむ場面も多いのですが,そこでまた,このサイクルの図に立ち戻り,「どこがうまくいっていないのかな」「それをどうしていけばいいのかな」と考えながら課題に取り組んでいっています。

  「気持ちが下がる(不全が募る)と,やる気が起きない」という現象にもう捕われることなく,その根本原因はどこなんだと探すと,必ずというほど身体のことが出てきて,やはり身体の問題は切り離せないことなのかなと感じます。「親指が育っ ていない」「体幹が整っていない」などというところに行き着くんだということが,改めてよくわかりました。

  大変ですが,コツコツやっていくしかないんですよね。やはりコツコツ積み重ねて,今の取り組みも,いい形で皆さんと共有できたらいいと思います。

質疑応答

Q. バランスボールは一日どれくらい乗っているんですか?

A. パソコンを見ている時は,ほぼずっとです。,パソコンをするのはだいたいご褒美の時間なので,喜んで座っています。

Q. ほめるときのポイントは?

褒め方としては,抽象的な言葉ではなく,具体的に,どこがどのように,ということを言います。例えば,「お尻がきちんと後ろに下がってえらいね」とか,左手が少しずれていたとしても,「じーくん,前は左手ぜんぜん置けなかったのに,すごいね!でももう少しここに置いてみようか」など,具体的に「どうするのが僕はえらいのか」「どうするとママから褒められるのか」―望ましい姿をしたからママは褒めてくれるんだな,ということがわかるように,賞賛・絶賛しているつもりです。

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