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2023.02.01カテゴリー:著者:大澤淳一

社会的排除を考える

 トライフルは、「働くこと」を通して幸せに生きることを目指して、「働くこと」を真剣に支援するグループです。今回は「社会的排除」について考えていきたいと思います。

社会的排除の源流

 社会的排除は、フランスで最初に提唱された概念であり、従来の貧困の概念を補完する基本理念として多くの先進諸国で注目されてきた考え方です。欧州委員会は、2000年のリスボン欧州理事会にて、貧困と社会的排除に抗するナショナル・アクション・プランを設定することを加盟国に義務付けました。

社会的排除とは

 社会的排除とは物質的・金銭的欠如のみならず、居住、教育、保健、社会 サービス、就労などの多次元の領域における個人が排除され、社会的交流や社会参加を阻まれ、徐々に社会の周縁に追いやられていくことを指します。社会的排除の状況に陥ることは、将来の展望や選択肢をはく奪されることであり、最悪の場合、生きることそのものから排除される可能性もあります。いわゆる「貧困」は、「状態を表すもの」であるのに対し、「社会的排除」は「排除されていくメカニズムまたはプロセスを表すもの」と言われています。つまり、個人を排除している仕組みや制度に焦点を当てているのが社会的排除なのです。その社会的排除の究極の姿が、「社会的孤立」と言われています。これは、社会との絆が完全に切れてしまっている状況で、社会参加や社会貢献は極めて困難であることを意味します。

事例から考える社会的排除

 そういった社会的排除について、「最貧困女子」(幻冬舎新書)を例に考えみたいと思います。最貧困女子とは、風俗業を生業やセーフティネットとして活用し、生活する人々です。3つの無縁(①家族の無縁・②地域の無縁・③制度の無縁)や3つの障がい(①精神障がい・②発達障がい・③知的障がい)などの条件が重なることで、最貧困女子になりやすいと言われています。風俗業で生計を立てているため、経済的にはある程度自立しつつも、職業的な差別を受けやすいことが社会的排除につながります。例えば、売春や風俗産業で働いて収入を得ることができるので、ホテルに泊まったり、食事を取ったりすることに不自由はなく行えます。一方で、社会保障等の公的なサービスの利用や、クレジットカード・賃貸物件の審査に通りにくいなど、社会的排除を受けやすい状況があると考えられます。上記の3つの無縁や3つの障がいが影響し、支援を受けないと、ますます社会的孤立のリスクを高めてしまいます。

 私はこのような社会的排除に対する対処法について、ミクロな視点の直接支援にとどまらず、マクロな視点のソーシャルアクションとして、行動していく姿勢がとても大切だと考えます。なぜなら、このような社会的排除は単なる個人の問題ではなく、社会全体の問題だからです。一機関で抱え込まずに、支援者同士で協働する体制をつくること、制度の必要性を社会に訴えること、マクロの視点で柔軟に行動することが必須と考えます。社会全体の問題として問題提起する勇気と行動力が、私たちには求められています。行動するかしないか、私たち支援者としての力量が問われています。 

<参考/引用文献>

・松為信雄「キャリア支援に基づく職業リハビリテーションカウンセリング」,ジアース教育新社,2021

・鈴木大介「最貧困女子」,幻冬舎新書,2014

・社会専門テキスト7「ソーシャルワーク演習」初版,中央法規出版

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大澤淳一

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