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2023.01.26カテゴリー:著者:大澤淳一

ニーズとディマンド

 「ニーズ」と「ディマンド」という言葉の意味の違いについてご存じでしょうか。この「ニーズ」という用語は、社会福祉だけだなく様々な領域で、使用されている言葉です。例えば心理学では、マズローの提唱する学説が有名で、この学説で使われるニーズに対応する日本語は「欲求」と言われています。次にマーケティング領域では、「潜在的な需要」の意味でニーズという言葉が用いられており、コトラーとケラーは「ニーズ」と「欲求」と「需要」という言葉を区別して使用していることに特徴があります。

 社会福祉と他領域他の「ニーズ」の言葉の意味の違いを理解するうえで重要なことは、ニーズを「必要」、ディマンドを「需要」という意味で捉え、両者を分けて理解することです。「必要」と「需要」は、いずれも「何かが求められている」という点では共通していますが、その本質は異なります。また、こうした必要と需要の違いは、大和言葉の「要る」「欲しい」の違いで考えるとわかりやすいです。つまり、「必要・要る」の場合は、「何らかの客観的な基準に基づいて生まれる必要性」に対して、「需要・欲しい」の場合は、「主観的な欲求や欲望に基づいて生まれる欲求、需要」と捉えることができ、このように考えると両者の性質の違いがよくわかります。しかし、生活必需品に代表されるように、両者は完全に分離する概念ではありません。

 もう少し掘り下げて考えるために、介助が必要な身体障がい者を例に、ニーズとディマンドの違いについて考えてみたいと思います。例えば、介助が必要な身体障がいのある方が「タバコを吸いたい」と思ったとします。これはニーズか、ディマンドか。「タバコを吸いたいから、吸わせてほしい」という主観的な基準に基づいているため、これはディマンドです。次に、一定間隔で痰吸引を行うことや、姿勢を変えること、トイレや食事の介助が必要なことは、ニーズか、ディマンドか。自分ではどうすることもできず、生命維持や人間生活を送る上で必要不可欠な、客観的な基準に基づいて生まれているため、このような場合には、支援のニーズと捉えます。

 このように「第三者によって、利用者の意思を超えた客観的な基準に基づいて把握される場合」と「福祉サービスの利用者自らの主観的な感じ方や考え方に基づいて把握される場合」の二種類があり、それぞれ「ニーズ/必要性」と「ディマンド/需要」という概念で整理しています。ニーズはまず、専門性を根拠にしたアセスメントによって把握されます。つまり、専門家は、専門知識に照らして、利用者がどのようなサービスを必要としているかを判断します。また、社会通念に基づいて把握されるニーズもあります。

 様々な技術革新を経た現在では、客観的な必要性、つまりニーズの考え方を重視することが主流化しています。しかし、主観的な需要、つまりディマンドは重要でないかというと、決してそうではありません。例え、一見愚行と思える行動であっても、その人個人のディマンドに基づき、QOLやウェルビーングの高い生活を送るためには、とても重要なことだからです。

 意思決定支援が重視される現代では、両者の違いを理解した使い分け、整理が必要です。トライフルでは、客観的な支援のニーズを適切に把握するためのアセスメントの実施、主観的な欲求/ディマンドを資料としてまとめるポートフォリオの制作といった支援を行なっています。

<参考/引用文献>「社会福祉の原理と政策」初版 中央法規出版

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