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2023.01.07カテゴリー:著者:大澤淳一

子どもから大人へ、学生から社会人へ

 トライフルは、「働くこと」を通して幸せに生きることを目指して、「働くこと」を真剣に支援するグループです。今回は「移行期の捉え方」について、です。

移行期の捉え方

 後期中等教育機関卒業に伴う進路選択では、「子どもから大人へ」という側面と、「学生から社会人へ」という2側面がある移行期と言われます。それは、今まで親に守られ、与えられ、管理されていた生活から、自分で選び、決定し、結果の責任を引き受ける生活への移行を意味します。ASDのある人にとって、この移行期に最も大切にしたいことは、ご本人の想いや、これまでの支援の積み重ねについて、①移行先に切れ目なく引き継ぐこと、②支援を継続し、一貫性のある支援を継続的に実行し続けることです。支援者が変わると支援が途切れてしまうというのは「あるある」ですが、そういったことは極力無くしていく必要があります。そこで重要なのが「個別の移行支援計画」の活用です。

個別の移行支援計画

 ここでは教育分野から「個別の移行支援計画」について概観していきます。2001年の「21世紀の特殊教育の在り方について(最終報告)」において、文部科学省は初めて学校卒業後の移行支援の必要性について言及したことを発端に、全国特殊教育学校長会による文部科学省委託の調査研究や、東京都知的障害養護学校就業促進推進研究会等でこの、「個別の移行支援計画」の重要性と開発が各所で行なわれてきました。アメリカでも個別障害者教育法にによって、学校から職場への移行に際して「ITP」(Individualized Transition Plan:個別の移行支援計画)を作成することを法的に整備するなど進めており、国内だけでなく、海外の動向も含めて個別の移行支援計画が重視されています。個別の移行支援計画は、個別の支援計画と併せて作成します。主に卒業後の関係者に対して①適切な支援を引き継ぐことや、②連携・協力関係を要請することを目的としたツールです。支援者が変わっても一貫性と継続性のある支援をつなぐための「療育カルテ」など、教育以外の分野でも同じようなコンテンツの開発が進んでいます。

支援計画からポートフォリオへ

 ここで大切なのは、そういったツール活用における「主体は誰か」という視点です。例えば、個別の移行支援計画は、一貫性のある支援体制を引き継ぐ目的に作成されるツールです。支援を引き継ぐことが目的なので、支援者主体で作成、活用がなされます。つまり、支援者のためのツールという側面が強い特徴があります。

 一方、当事者目線が薄いとも言えます。子どもから大人へ、学生から社会人への移行期を経て、新たなステージに進んでいくのは、障がいのあるご本人です。なので、支援者のための個別の移行支援計画と併せて、ご本人目線で、ご本人のための、将来希望する生活や自己PR、合理的配慮などをまとめた別のツールが必要です。いわゆる、ライフプランと言われるものに近いですが、単なる計画(プラン)にとどまらず、ご本人のライフデザイン(価値観)を強く反映させることに、大きな特徴があります。それを我々は「ポートフォリオ」と名づけ、移行期にご本人と一緒になって作成する必要性があることを主張、提案しています。

 支援計画からポートフォリオへ。自己権利擁護など、人権意識が高まる移行期の支援では、どういった視点に立って支援をするか、「立ち位置」を意識して取り組むことが大切です。

<引用/参考文献>

・松為信雄「キャリア支援に基づく職業リハビリテーションカウンセリング」,ジアース教育新社,2021

・東京都知的障害養護学校就業促進研究協議会編 個別の移行支援計画Q&A基礎編 ジアース教育新社 2003

・宮﨑英憲(編著) 個別の教育支援計画に基づく個別の移行支援計画の展開 -特別な教育的ニーズを持つ子どもへの支援- ジアース教育新社 2004

・本間博彰(監修) 自閉症の療育カルテ 明石書店 2010

・平野厚雄 発達障がいの子ども お金のこと 親が亡くなった後のこと 星雲社 2013

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大澤淳一

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