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2022.12.31カテゴリー:著者:大澤淳一

雇用率よりも、仕事を創ること

 トライフルは、「働くこと」を通して幸せに生きることを目指して、「働くこと」を真剣に支援するグループです。今回は「障害者雇用・就労支援の新しい動き」について、考えていきます。

法定雇用率

 法定雇用率は、従業員が一定以上の規模の事業主は、従業員に占める身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合を「法定雇用率」以上にする義務があります。現在の日本の法定雇用率のルールは、従業員を43.5人以上雇用している事業主は、障害者を1人以上を雇用しなければいけないというものです。現行の日本の制度では、民間企業で2.3%、国/地方自治体で2.6%、都道府県教育委員会で2.5%です。

諸外国と比べて低い、日本の雇用率

 諸外国を見ても、法定雇用率を採用している国は多くあります。例えば、イタリア7%、フランス6%、ドイツ5%、韓国は5%などです。日本は2.3%ですので、これらの諸外国と比べて、かなり低い数値となっています。こうした日本全体の状況について、もう少し深掘りしていくと、民間企業における障害者雇用数は約59.8万人で、実雇用率は2.20%、法定雇用率達成企業割合は47.0%となっています。(厚労省資料より)今後、日本が諸外国と同水準まで雇用率を高めることを考えると、純粋計算で今の倍の約120万人の雇用が必須となります。

法定雇用率を設定していない国もある

 「雇用義務制度が、障がい者の能力を強調しがちとなり、かえって障がい者差別に繋がりうる」という理由で、法定雇用率を設定していない諸外国もあります。例えば、アメリア、イギリス、スウェーデンなどの国々です。

現場の実情

 このような現状を整理すると、①諸外国と比べて低い法定雇用率をどう高めるか、②障害者雇用の質をどう高めていくか、の2点が、日本の障害者雇用の課題として考えられます。

 前者については、これまで見てきたように、諸外国に比べて、日本の雇用環境はまだまだ未熟なため、もっと多くの職場で障がいのある人が活躍できる場を用意することがまずは重要というのはいうまでもないでしょう。早急に法定雇用率を諸外国と同じ5%程度まで高める必要があります。

 その上で、後者の障害者雇用の質をどう高めるか、は、さらに重要な課題と言えます。なぜなら、障害者雇用の現場では、障がいのある人を、法定雇用率を達成するための「カウント(数値)」としてみる人事担当者も多く、近年では、障害者雇用率を購入する「代行ビジネス」が大流行している現実もあります。また、特例子会社でも、清掃や事務補助といった本業の生産活動とは分離された特別な業務を、障がいのある人が担当しています。独立採算で成り立っている特例子会社もごく限られており、実際にはグループ会社の下請けを業務として行っているところがほとんどで、実質的に障がいのある人が「戦力」として捉えられていないと感じる現場も残念ながら多くあります。

新しい働き方

 これらの対応策について、現在議論されている3つのトピックを紹介します。

①超短時間雇用

 まずは、「超短時間雇用」です。これは、週1時間程度からの短時間での雇用・労働を推進する雇用モデルの取り組みです。①雇用率のカウントの対象外であるが、就労機会をつくることを重視していること。②東京大学との共同研究として試行が始まっていること。(例:ソフトバンク)などの特徴があります。障がいのある人の中には、どうしても長時間働くことが困難な人もおり、そういった人の働く間口を広げることができるメリットがあります。一方で、現行の障害者雇用制度では30時間以上でフルタイム、20-30時間で短時間労働として雇用カウントがつく制度設計になっているため、それ以下の超短時間労働に対して、法定雇用率に反映されない点がデメリットと言えます。昨今の法改正で、10-20時間の労働者に対して雇用率算定を検討する方向で議論が進んでおり、今後の動向に注目です。

②ソーシャルファーム

 2019年12月に、「都民の就労の支援に係る施策の推進とソーシャルファームの促進に関する条例」が、東京都の条例として制定されました。ソーシャルファームとは、「就労困難者と認められる者の就労と自立を進めるため、事業から収入を主たる財源としながら、その職場において、就労困難者として求められる者が他の従業員と共に働いている社会的企業」のことです。東京都はこのようなソーシャルファームの創設や活動を促進することで、就労支援を効果的に実施すると謳っており、このような動きは、障がいのある人だけでなく、就業困難を抱えた多くの人の就職先やキャリアファンタジーを描く上で期待できるでしょう。今後の動向に注目です。

③みなし雇用

 みなし雇用は、企業が就労継続支援などの福祉事業所に対して仕事を発注し、その発注量に沿って、障害者雇用率の緩和を促す方策のことです。まだ制度化には至っていませんが、制度化に向けて議論が進んでいます。実際、障がいのある人の職場では、雇用することよりも、「仕事を創ること」の方がはるかに難しいです。また、業種によってはどうしても障がいのある人に向かない業種もあります。そういった弱みを均等にならす発想ではなく、仕事を福祉事業所等に発注し、その発注量に応じて雇用率に換算する仕組み化を図ることで、お互いの強みを活かす発想です。例えばフランスでは、発注に対して以前は雇用率換算がなされていたそうですが、近年の法改正で納付金の減額事由へと、少しトーンダウンしている事情などもあるそうです。今後の動きに注目です。

「仕事を創ること」に目を向ける

 ここまで見てきたように、日本の障害者雇用はまだまだ発展途上と言えます。障害者雇用を推進していくためには、①雇用率を高めること、②仕事自体の質を高めること、のどちらが欠けてもいけません。つい目先の雇用率にばかり目がむきがちですが、今後はより一層仕事の質が問われることが予想されます。そういった意味で、法定雇用率ではなく、障がいのある人のよりよい仕事を創出することが求められています。

<参考/引用文献>

・松為信雄「キャリア支援に基づく職業リハビリテーションカウンセリング」,ジアース教育新社,2021

・厚生労働省「障害者雇用のルール」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jigyounushi/page10.html#01 

・厚生労働省「障害者総合支援法改正について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/sougoushien/index_00002.html  

・SoftBank「ショートタイムワーク」https://www.softbank.jp/corp/sustainability/special/stw/ 

・東京しごと財団「ソーシャルファーム」https://www.shigotozaidan.or.jp/koyo-kankyo/joseikin/social-firm.html 

・東京新聞「障害者のみなし雇用導入、求める声 働く場の拡大に期待」https://www.google.com/url?sa=i&url=https%3A%2F%2Fwww.tokyo-np.co.jp%2Farticle%2F51171&psig=AOvVaw2KvnRss_t1lS9QZw3xvQMB&ust=1672553351351000&source=images&cd=vfe&ved=0CBAQjRxqFwoTCPjxoPWYo_wCFQAAAAAdAAAAABAE

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