たすく

Staff Blog

スタッフブログ

2022.12.22カテゴリー:著者:大澤淳一

いまさら人に訊けない「福祉的就労」

 トライフルは、「働くこと」を通して幸せに生きることを目指して、「働く」を支援しているグループです。今回は「福祉的就労」について、考えていきます。

障害福祉制度

 日本の障害福祉制度は、かつて行政がサービスを一方的に決定する「措置制度」を採用していました。「措置」であるため、サービスを自己選択・自己決定することができませんでした。しかし、2003年に「支援費制度」が導入されました。それは、障害のある人は、自分で利用する福祉サービスを、自分で自己選択・自己決定できるようになったことを意味します。法律的には、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)」に体系化され、現行の制度として位置づいています。障害者総合支援法は、大きく①自立支援給付(介護等給付・訓練等給付・相談支援)と、②地域生活支援事業の枠組みで、さまざまな福祉サービスが整理されています。

就労にかかわる主な障害福祉サービス

 今回は、就労に関わる障害福祉サービスを中心に概観していきます。就労に関わる障害福祉サービスは、主に「自立支援給付」という枠組みで整理されます。さらに、介護の支援を受ける場合には「介護給付」、訓練等の支援を受ける場合には「訓練等給付」として位置付けられ、就労に関わる障害福祉サービスは、主に訓練等給付に位置づいています。サービス提供に期限が付けられていることが多く、利用する際にはそのことを念頭に置いた活用の工夫が必要です。

支援を受ける側から、働いて納税する側へ

 就労にかかる障害福祉サービスは、自立訓練(機能訓練/生活訓練)、就労継続支援A型/B型、就労移行支援、就労定着支援が、現行の制度に位置づいています。トライフルは、自立訓練(生活訓練)と就労移行支援を運営していますので、まさにこの事業をおこなっている事業所となります。今後、就労選択支援(仮)という、就労アセスメントに特化した事業の制度化に向けた議論も進んでいます。前回の制度見直しの際に、就労定着支援の制度化が図られたこと、次回の制度見直しに向けて就労選択支援(仮)の制度化が議論されていることから、就労系の障害福祉サービスの充実に力が入っていることは明らかです。今後はますます、サービスを受給するだけではなく、働いて税金を支払うタックスペイヤーになることが、障がいのある人にも求められていると言えるでしょう。こういった背景を理解し、「働くこと」を、単なる生活費を稼ぐ行為としてだけでなく、社会との接点や自己実現の手段として、ポジティブに捉え直すことができるかどうか。今後障がいのある人のQOLを大きく左右する重要なポイントであると考えています。

福祉的就労 -キャリアの視点と適切なアセスメント-

 就労支援の現場にいると、「福祉的就労」という言葉をよく聞きます。厳密な定義を調べてみると、実は明確な定義がなされているわけではなさそうです。しかし、体感的には就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型へと進路決定する言葉として用いられているように感じます。このような福祉的就労の抱える問題点の一つに、「抱え込み」があります。つまり、同じ事業所に利用者を停滞させ、就労まで結びつけることを怠り、利用期限を終えてしまうことです。正直にお話ししますと、実はトライフルでもかつて、この失敗をしてしまったことがありました。振り返ってみるとこうした失敗の背景には、「キャリア」の視点の不足が大きかったように思います。キャリアの視点を無視して、障がいの程度を理由に、一方的に能力を低く見立て、ご本人の活動を制限してしまった(十分な挑戦の機会を与えられなかった)ことは、支援者の怠慢以外何物でもなく、深く反省しています。また、別の観点から考えると、個人の適正な評価(アセスメント)とジョブマッチングの精度が低かった、とも言えます。適正な評価ができていれば、同じ事業所に停滞し続けることなく、就労に挑戦できたはずだったからです。今は、どちらも改善を試みて、以前と同じ状況ではありませんが、この「キャリアの視点を持つこと」と「適正な評価を行うこと」ができているかどうかがズバリ、福祉的就労に限らず、職業選択をする際の一番のポイントと言えるでしょう。目先の給料や工賃等に目を奪われたり、無計画にただ停滞を続けていると、本来の力を発揮していればできたはずのキャリアアップの機会を逸してしまい、あなたの貴重な時間を奪うことにつながります。そのあたりを冷静に捉え、伴走支援を行いながら適切な助言をしてくれるサポーターを見つけることも、早期から意識しておくとよいでしょう。

<参考/引用文献>

・松為信雄「キャリア支援に基づく職業リハビリテーションカウンセリング」,ジアース教育新社,2021

・厚生労働省,障害福祉サービスについてhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/naiyou.html   

・障害保健福祉研究情報システム,福祉的就労における労働保護上の問題点https://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/resource/hikaku/matsui091130/2_101.html 

タグ:

この記事を書いたスタッフ

大澤淳一

教室ページトップへ戻る

挑戦と再挑戦の機会を創出する

TRYFULL

鎌倉

TEL.0467-53-7370

tasuc.com

〒248-0005 神奈川県鎌倉市雪ノ下3-4-25
JR鎌倉駅東口を出て、鶴岡八幡宮方向へ徒歩15分
京急バス「大学前」下車徒歩1分

  • instagram