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2022.12.17カテゴリー:著者:大澤淳一

知識0からわかる日本の障害者雇用制度

 トライフルは、障がいのある人が幸福に生きることを目指して、「働くこと」を支援しています。今回は「障害者雇用制度」について、法的根拠や雇用率、納付金制度を概観してみたいと思います。

「障害者雇用」の法的根拠と雇用状況

 現在、日本の障害者雇用に関する制度や施策の法的根拠は、①障害者雇用促進法、②障害者差別解消法、③障害者虐待防止法の3つに集約されます。障害者雇用者数の推移としては、1960年に身体障害者雇用促進法の制定を皮切りに、約10年周期で、身体障害、知的障害、精神障害の順に制度上の整備が進んでいます。それに伴い全体的な雇用者数も年々上昇傾向で、特に精神障害や発達障害の分野での伸びが顕著です。

障害者雇用率制度

 障害者雇用率制度により、企業はある一定数の障害者を雇用しなければならないという義務を負っています。その対象は、身体障害、知的障害、精神障害の3つの障害で、発達障害であるASDは、知的障害を伴う場合には知的障害、知的な遅れを伴わない場合には精神障害の枠組みの中に集約されています。障害者雇用納付金制度により、法定雇用率を達成しない企業には、1人につき5万円の罰金を支払う義務が生じます。逆に達成した企業には、上回るごとに月2万7千円が支払われるという仕組みです。2021年3月より、常用雇用労働者43.5人以上の企業に課せられている法定雇用率は2.3%となっています(2022年12月現在)。

法定雇用率の遵守と企業イメージ

 企業の法定雇用率は、毎年6月1日に障害者雇用報告としてハローワークに報告する義務があり、雇用が進まない場合には指導の対象となります。雇用率を違反することについては、「お金の問題」というよりは、法律違反をする企業という「レッテルを貼られること」に対する信用の問題が大きいと言われています。したがって、企業の社会的責任(CSR)の観点からも、今後一層雇用率についての法令遵守をすることの重要性が増すと考えられます。その一方で、雇用した障害のある人を農園などのサテライトオフィスで働かせて、そのマネジメントを全く別の企業が行う代行ビジネスも近年増加しています。近年、障害者雇用率の増加に伴い、企業就労者は確実に増加しています。障害者雇用を取り巻くモラル・倫理観が問われる時代となってきています。

制度の矛盾-ホンネとタテマエ-

 今回は、「制度」としての「障害者雇用」を概観してきました。近年、障害者雇用者数は確実に伸びていますが、一方で障害者雇用納付金制度では、障害者雇用率、未達企業からの納付金を財源としているなど、制度設計上の課題も山積しているのが現状です。つまり、障害者雇用が進み、達成企業が増え過ぎてしまうと、この制度自体が崩壊してしまうということです。すると、制度の運用者としては、無意識のうちにどこかでブレーキをかけたり、管理や調整を図る心理が働く可能性は否定しきれず、自己矛盾を抱えた制度と言えるでしょう。そもそも「障害者雇用」という言葉自体にも、私は違和感を感じることも多いです。この辺りの議論については、また別の機会に引き続き考察を続けていきたいと思います。

<参考/引用文献>

・松為信雄「キャリア支援に基づく職業リハビリテーションカウンセリング」,ジアース教育新社,2021

・眞保智子「障害者雇用の実務と就労支援」,日本法令,2017

・障害者雇用対策の現状と今後の展望 https://www.zenjukyo.or.jp/small_info/r030122_kinki_kaigi.pdf 

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