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2022.06.18カテゴリー:著者:城日菜子

移動ができれば世界が広がる!〜高校1年生 Aくんの挑戦〜

こんにちは!たすくの城日菜子です。
早いものでもう6月も中旬、雨が降ったり日差しが強かったりと、嫌な天気が続きますね。(私は夏が大嫌いです。)
今日は、「移動支援」についてのお話をさせていただきます。

たすくの機能的な目標の中には、「5インディペンデント (2)移動 ③適切な公共交通機関を使う。」という項目があります。
公共交通機関を利用するためには、移動手段を調べたり、目的の電車のホームに間違えずに行ったり、
スイカのチャージをしたり 乗車マナーを守って乗ったり、乗り過ごさずに目的地で降りたり…
様々なステップがありますよね。
でも、そのステップの中の、どこに課題があるのかは、経験してみないとわかりません。

ここからは、高校生になり、自立移動に挑戦しているAくんのお話をします。
Aくんは今、学校から駅まで歩き、電車に乗り、一度乗り換えてセンター南で降り、教室まで歩く、という移動を練習しています。
時間にすると、およそ1時間程度の移動になります。
Aくんは不安が大きいお子さんで、今まで移動は必ずお母さんと一緒でした。
不安からくるこだわり行動も多く、道端のいろいろなものを触って歩いてしまうという課題がありました。
また、聴覚過敏があり、突然の大きな音や、子供の鳴き声が苦手という特性もあります。
今回移動の練習を始めるにあたって、見通しを持つためのたすくスケジュールを導入しました。(アプリを使用するために、専用のアイフォンを購入しました。)
そして、情動のコントロールをするためのセンソリーグッズ探しを行いました。
指先の感覚探求のあるお子さんなので、今流行りのプッシュポップや、ペラペラめくれるメモ帳、お気に入りのカードなどを準備しました。
聴覚過敏に関しては、ヘッドホンを購入し、アイフォンの中にお気に入りの楽曲を入れて、苦しくなった時に聞くように用意しました。
様々な事前準備を経て、いざ挑戦です。

初日はかなり緊張していることがAくんの様子から伝わってきました。
しかし、学校で「城先生が来ました。次のスケジュールは、歩いて、駅だね。駅に向かいましょう。」
と、たすくスケジュールを見せながら説明すると、
自ら駅に向かって、スタスタと歩き出したのです!
(本当に道がわかっているのか?正直少し怪しいと思っていたので、曲がり道で、「駅はどっち?」と聞いてみましたが、「こっち」と、正解の道へ進みました。)
車内では、「声が出ないか心配」と、お母さんから聞いていたのですが、
Aくんはそんな心配もよそに、とっても静かに座り続けていました。
「お母さんがいない」という緊張感も良かったのでしょうね。

挑戦2日目。
道端の掲示板や、電信柱に貼ってあるポスターを触ってしまう(文字が好きなので、文字を見つけると、誘発的に触りたくなってしまうようです。)
問題を解消するために、常時何か指先の感覚を入れるものを持たせておくとどうか?ということで、
小さなプッシュポップ(無限プチプチのようなものです。)を持たせました。
序盤は興味を示し、道端のものは触らなかったのですが
道端のものを触ることが、全てなくなるわけではありませんでした。
そこで私が、何度か、プッシュポップを触るように促しました。
すると、私の関わり方が過干渉気味だったので、Aくんは少しイライラしていました。
そんな時、とてつもなく大きなバイクのエンジン音が聞こえました。
さらにその後、追い討ちをかけるかのように、近くのマンションから、子供の鳴き声が聞こえました。
苦手なものが重なり、情動が溢れてしまったAくんは走り出し、
近くの駐車場に入り、顔や首を掻きむしって、パニックになってしまいました。
その時私は、用意していた音楽を聞かせようと思ったのですが、ヘッドホンが初めて使うものだったため、はっきりと、「いらない。」と言われました。
得体の知れないものだと思ったのでしょう。
少しクールダウンしようと、車のない方へ誘導し、落ち着くのを待ちました。
10分くらい経って、少し落ち着いてきたので、スケジュールを見せました。
「駅に行きます。行ける?」と聞くと、「行ける。」と答えてくれました。
そして「このヘッドホンからは、大好きなさんぽの音楽が流れるんだよ。」と、音を出して聞かせました。
すると、Aくんは、自らヘッドホンをつけました。
落ち着いて歩き出してからは先週と同じ、車内でも静かな、いつものAくんでした。

挑戦3日目
Aくんは外出時は、ノイズキャンセリングつきのヘッドホンをつけています。
そのヘッドホンで、お母さんの携帯から音楽を流して聞いていることもあります。
お母さんと一緒ではない自立移動は、音楽が聞けないため、持参していなかったのですが、
お母さんと話し合い、音楽が聞けなくても良いから、慣れたノイズキャンセリングヘッドホンを持参して突然の音に対応しよう、と決めました。
そして学校につき、Aくんにノイズキャンセリングヘッドホンを見せて、つけるか聞きました。
Aくんは、「つける。」と言い、自ら装着し、その後は何のハプニングもなく、横浜教室まで辿り着きました。

挑戦には、ハプニングがつきものです。
しかし、ハプニングがあるからこそ、課題が見え、改善していける。
Aくんのハプニングに立ち会えて、一緒に原因を考えられたことを、私は良かったなと思っています。
そして、Aくんのハプニングに立ち会えたのが、お母さんでなく、私で良かった、とも思いました。
移動の練習は、保護者よりも、第三者が一緒にした方が、本人の緊張感も高まりますし、周りから白い目で見られることも少ないです。
どうしても、移動の練習をしているのが保護者だと、「しつけがなっていない。」と思われてしまいがちで、私の母も、移動時の妹の行動について、白い目を向けられたり、「しつけをちゃんとしろ」と言われたりしていました。(私の妹は、知的障害を伴う自閉症です。)
だからこそ、移動支援を探し、第三者と移動の経験を積み、家族以外の人と移動できるようになっておくということも重要です。
でも、なぜ保護者が移動の練習をしていたら、周りから白い目で見られなければならないのか?
その辺りも納得いかない点も多いですよね。
私は、もっとみんなが受け入れられるような社会になればいいのにと、ずっと思っています。
でも、そのためには、知ってもらう必要があります。
外に出ていくことが絶対的に必要です。
どうやったって、私たちは少数派なのですから。

自由を掴むためには、移動のスキルは必要不可欠です。
例えそれが1人でなく、家族、母親以外の人と一緒に移動できるということだけでも、世界が広がります。
例えば将来グループホームで生活したとして、
自ら移動ができたり、移動支援の方がいて、一緒に移動することができたりすれば、お休みの日に余暇を楽しむことができます。
外に出て、好きなことをすることができます。
だから、多少心配でも勇気を持って踏み出して、経験を積むことが最も重要だと、私は思います。

ある日、いつも通りAくんと教室に向かっていると、
電車に乗った時に、Aくんがおもむろに、ヘッドホンを外しました。
私が、「いらないの?」と聞くと、はっきりと「いらない。」と答えました。
Aくんが嫌いなのは、突然の子供の声や大きな音。
電車の車内は道を歩いている時よりもそのような音が少ないと思い、ヘッドホンを外したのだと思います。
この選択は、Aくんが実際移動を経験してみて、「ここは大丈夫」と判断できるようになった証拠ですよね。

梅雨入りし、雨が降る日も増えて来ました。
でも、雨だろうと台風だろうと、私たちは外に出なければならない。
それが、自由を掴むために必要なスキルだからです。
だから、私はAくんと一緒に、どんなに雨が降っても傘を差して教室に向かおうと決意しています。
(次の課題は、「傘をさして歩くこと。周りの人の迷惑にならないように傘を持ち歩くこと‼︎」)

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城日菜子

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