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2024.02.13カテゴリー:著者:鹿島真知子

意思決定支援とポートフォリオ

こんにちは。たすくの鹿島真知子です。
少し日が長くなって、寒さの中にも春に向かっていることを感じる季節になりました。

先週末は、毎月恒例の保護者学習会「教材マスターの集い」を開催しました。
テーマは「ポートフォリオ」
ポートフォリオとは、「書類を運ぶためのケース」のことを表し、「書類全体を一つのものとして扱う」という意味を持っています。
「さまざまな書類をひとまとめにし、運びながら出し入れできるケース」といったイメージです。
書類を綴じないで持ち歩くので、相手や状況によって部分的に差し替えることもでき、「本人主体」で活用するものだと考えています。

たすくでは、お子さんが幼いときはご家族と支援者とでこのポートフォリオ(カテゴリーを10に分けて整理しているので、カテゴリー10と名付けています)を作成し、
青年期になると、本人が支援者に手伝ってもらいながら作成します。
ポートフォリオには、さまざまな場面での本人の思いや願いを写真、動画、文章で残します。
この記録を元に、いずれ自分のことを説明できるツールとして活用するためです。

学習会では、ある青年のポートフォリオ例を見てから、我が子のポートフォリオにどんな内容を盛り込んでいくと良いかを考える時間を作りました。

そこで、議論になったのは、表出が少ない我が子の本当の気持ちをどうやって知れば良いのかということでした。

高2の男の子のお母さんがおっしゃいました。
「今まで、青が好きだと思い込んでいたのだけど、最近、青と赤とどっちがいいか改めて聞いたら、赤を選ぶんです。順番を変えて聞いてもやっぱり赤を選ぶ。実は、赤の方が好きだったということを、初めて知りました」

こんな経験をしたことのある親御さんは少なくないと思います。
子どもが好きだと思って作り続けてきた料理が、実はそんなに好きではなかったとか、
子どもが喜ぶと思って買ってきてくれる定番のお土産より、欲しいものは別にあったとか。
本人が、意思表明をしない限り、本当のことはわからないのですが、普段から表出が少ないお子さんは、自ら伝えることなく、提示されたものを受け入れてしまうことが多いのです。

そうなると、本人の思いや願いを記録すると言われても、何を記録したらいいのかわからない・・・
と悩んでしまいます。

先ほどの高2のお子さんのお母さんは、できる限り「どっちがいい?」と聞きながら、トーナメント方式で一番好きなものを探している最中だそうです。
同じものについて順番を変えて聞いてみたり、時間をおいて聞いてみたり。
小さい頃もやっていたことではありますが、改めて今やってみると新たな発見があるそうです。
そのトーナメント結果の記録は、本人の意思を知る上でとても重要な手掛かりになることでしょう。

横浜教室には、ASDの妹さんをもつスタッフがいます。
旅行が好きなお母さんは、小さい頃から娘二人を連れてさまざまな地へ出かけたそうです。
「初めて」が苦手な妹さんですから上手くいかないこともたくさんあったとのことですが、何度も訪れるうちに、「行きたい場所」が明確になってきたそうです。
だから、本人の負荷が高すぎない程度に、経験をすることが大切だと話していました。
小学生の娘二人を連れてパリ旅行を実行したことのあるお母さんの逞しさを、私は心からリスペクトしています。

綾屋紗月さん著「発達障害当事者研究」には、こう書いてありました。
したい性:「〜したい」という意思。当事者である綾屋さんは「したい性」が立ち上がらない。
せねば性:何かをしたいと思っていても行動に移せないでいると、不安や焦りの気持ち「せねば」に移行する。これは、かなり心理的なダメージになる。
します性:あらかじめ「〜します」と行動を決めてしまうことで、行動をスタートさせることができる。
と定義しています。そして、「します性」が「したい性」を導くことがあるそうです。

「します性」が、スケジュールに組み込んだ活動であるとすると、意図的にスケジュールを繰り返したり、バリエーションをつけたりすることが「したい性」を生み出す可能性につながるのではないかと私は考えました。
これが、彼らの意思決定につながるとしたら、どんな生活リズムを作り、どんな場面でどんな新しい経験を組み込んでいくかが鍵になるのではないかと思ったのです。

3月17日には、家族会活動として、中川まちなかマーケットにめだかすくいを出店する予定です。
日々の療育計画に加え、体験型の学習も計画実施し、その両方を記録していくことが、意思決定につながるのだとしたら、これも、彼らの意思決定への小さな一歩になることでしょう。

お近くにお寄りの際は、ぜひ、めだかすくいを楽しんでいってくださいね。

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鹿島真知子

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