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2023.05.29カテゴリー:著者:鹿島真知子

アテレコ上手なお母さん〜見た時に聞かせて言葉をためる〜

こんにちは。日差しが強くなり、木々の緑が増え、夏の訪れを感じる今日この頃です。
寒がりだけど、流石にそろそろヒートテックをしまおうかな〜と思っている、たすくの鹿島真知子です。

今回は、2歳から通ってくださっている小2のAくんのお話を聞いてください。
今週、6回目のアセスメントがあり、改めてお子さんの成長を支えている家庭療育の素晴らしさに感動し、お伝えしたくなりました。

6年前、初めて出会ったAくんは、片手で壁を触りながら、どこを見るともなく壁伝いに歩き回っていました。
発語もなく、目が合うこともありませんでした。
宇佐川浩先生の発達臨床モデルを基に、Aくんは、感覚優位の世界の段階で、情報を入力する視知覚・聴知覚を上手く使えていないから、「視る」「聴く」を育てる療育をしていこうという話をお母さんにしたことを覚えています。

その後のアセスメントで、Aくんは、前庭-動眼系に困難があり、対象を見ることに苦労していることがわかりました。

人は、話す前に見たり聞いたりして言葉を獲得していきます。
見ることにハンディのあるAくんに言葉を教えるためには、Aくんが見たものの言葉を聞かせることを繰り返す必要があります。
「アテレコ」です。
お母さんは、Aくんが見たものの名前を聞かせ、Aくんがしていることを言語化して聞かせることを毎日毎日繰り返してきました。
絵カードを作成して、これからする行動を提示し、
絵カードを指差している時に「手を洗う」と聞かせ、
手を洗っている時にも「手を洗う」と聞かせる。
こんな風に、Aくんの視線や行動に合わせて、繰り返し繰り返し聞かせていきました。
Aくんのお母さんは、聞かせるタイミングが絶妙なのです。
「アテレコのプロ」なのです。

いろんな場面で、その場に応じた言葉を聞かせて来たことで、Aくんはたくさんの言葉を覚えて使えるようになりました。
言葉をためることに加えて、流暢な発語に向けて、舌や口の体操プログラムにも取り組んで来ました。
そして、よくしゃべり、表情豊かな少年に成長しました。

そんなAくんは、最近、来室した際、
「こんにちは。A(フルネーム)です。よろしくお願いします。」
とインターホン越しにはっきりと話してくれます。
Aくんが来室する時間になると、その声が聞きたくて、スタッフはワクワクしてしまうのです。

発達に凸凹があったとしても、その子に合った学び方があって、それを繰り返すことで伸びる力はたくさんあるということを、Aくんとそのご家族が示してくれているからこそ、私たちも、さらに学ぶ意欲が湧いてくるのでした。

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