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2023.03.09カテゴリー：スタッフ日記, 療育著者：Kai Chie

子どものやる気と主体性を引き出す工夫〜トークンエコノミー法

こんにちは！TASUC文京教室の甲斐です。

前回のブログで、息子の宿題等の取り組みにスケジュールを活用したお話をさせていただきました。

その日にやらなければならないことをスケジュールに貼り出し、自分で視覚的に確認できるようにすることで、親からの指示がなくても行動できる工夫をしました。

しかし、やることはわかっていても、やる気が出ずに取り組めないということもありますよね。

息子もまさに、「やらなければならない。けれど、やる気になれない。」この葛藤と戦う毎日でした。

そこで取り入れたのが、トークンエコノミー法です。トークンエコノミー法とは、「トークン＝ご褒美」を活用して、社会的に好ましい行動を自発的に引き出す心理学の行動療法の一つです。一定の課題を正しく遂行できたときに、あらかじめ約束した条件に従ってトークン（お金やシールなど）を与えます。トークンを一定量貯めたらご褒美と交換できるというシステムです。このシステムはお店のポイントカードなどでも使われているのでイメージしやすいと思います。

息子には、一つの課題が終わったら10ポイントのトークンを与え、全ての課題が終わったら1ポイント＝1円としてお金と交換します。また、「後回しにしないで先に課題に取り組み始める」「自ら取り組む」という行動を目標にしたかったので、「○時までに終わったら10ポイント、△時までなら20ポイント、□時までなら30ポイント」という時間の目標を3段階に設定しました。さらに、親に促されることなく全て自分で終わらせることができたらさらにボーナスポイントを与えるように設定しています。

貯めたお金はその場で好きなお菓子を買えるようにお菓子を準備しています。また、本人のお小遣いとして、玩具など好きなものを買うことも自由にしています。息子は欲しいゲームソフトがあるため、それを発売日に買うためにお金を貯める目標を立てました。ゲームを買うためにいくら必要か、発売日まであと何日かを調べて、1日あたりいくら貯めたら良いかを計算して、毎日の目標にしています。

また、毎日の収支は自分で手帳に記録して管理をするようにしています。

自分の頑張りが見える化できたことで、モチベーションが続きやすく、主体的に取り組む行動が増えました。

トークンエコノミー法は、報酬系という脳の働きを活性化させて好ましい行動を引き出す方法です。

報酬系が活性化するとドーパミンという脳内物質が活性化して“快感”を得ることができます。報酬系が活性化するタイミングとして、「報酬を得る」時だけでなく「報酬を期待している」時にも活性化します。特に後者は行動の動機付けやモチベーションの維持に関わってきます。

ADHDの方は、「報酬を得る」時には報酬系が強く働きますが、「報酬を期待している」時には報酬系の活動が弱いという特徴があることがわかっています。そのため、報酬を得るための行動に対する動機付けが起きにくく、またモチベーションを長期間維持しにくいという傾向があります。これに対して、目標達成のためのステップを小さく分けて、その都度報酬を得ることで報酬系のサイクルを回しやすくし、最終的に大きな目標の達成に導いていきます。言い換えると、大きく得難い報酬（目標）を、小さく得やすい報酬（目標）に分割して取り組みます。

そうすることで、初めは難しいと思っていた目標を達成できるようになります。子どもも比較的容易に達成できる目標をこなし報酬を得る小さなステップを繰り返すことで、達成感を感じることができ、次もやってみようと主体的な行動も促されます。

我が家では、トークンエコノミー法を取り入れたことで、様々な学習の機会を増やすことができました。例えば、時間を意識して行動すること、その日の取り組み内容を自分で調整すること、お小遣いを計画的に貯めて使う経験などです。

今後は学習内容の質や完成度に意識を向けて取り組めるよう、達成度の段階づけをしていきたいと考えています。

余談ですが、お兄ちゃんが勉強をしてご褒美をもらっているのを見て、4歳の弟も真似をしてご褒美をもらうために勉強を自主的に取り組むようになりました。弟もお金を数える練習や、お金とお菓子を交換してお金の価値を学んでいます。意図せずお兄ちゃんが良い手本になっており、嬉しい副産物です！