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2024.07.14カテゴリー:
感覚調整障害・プラクシスの障害の理解と対応
こんにちは。たすくの鹿島です。
たすくでは、「子ども理解」を最も大切にしています。
そのために、保護者の方とともに毎月学習会を開いています。
6月は「感覚調整障害」、7月は「プラクシスの障害」がテーマでした。
「感覚調整」については「好き嫌い」程度に、
「プラクシス」については「苦手」「練習不足」程度に受け取られてしまうことが多いかもしれません。
これらは、もっとも理解されづらい分野とも言えます。
周りの人は励ますつもりで「大丈夫だよ」「頑張って」と声をかけることが多く、
それによって本人は「我慢しなくちゃ」「自分の努力が足りない」と感じやすく、
自己不全感に繋がりやすいのです。
感覚処理については以前のブログにも書かせていただきました。
感じ方は、その人にしかわかりません。
しかし、恥ずかしながら、私は教員時代にこのことを真に理解していませんでした。
当事者の本を読み、知った気になっていただけでした。
ところが、
前から歩いてくる集団に怯えて目を塞ぎ動けなくなってしまう子
電車が近づく空気の動きを感じて逃げ出す子
ベビーカーを見るだけで苦しみ心を乱す子
そんな子どもたちとたくさんの時を共にし、
これらのことが、想像を絶する辛さであり、生活に大きな影響を及ぼすこと、さまざまな経験を阻むことを知りました。
それでも、当事者の本当の感じ方を自分の感覚として感じることはできません。
だから、自分の物差しで測ってはいけないと常々思うのです。
本人の感じ方に寄り添いながら、生活への影響を最小限にするためにどうしたら良いかを考えて行くことが大切だと自分に言い聞かせています。
「プラクシス」は聞きなれない言葉かもしれません。
特に慣れていなかったり、初めてやる運動行動(いわゆる運動やスポーツに限らない、からだの動かし方)を企画するときに起こる、感覚の入力から運動の出力までの脳と身体で起こる一連の過程を「プラクシス」と言います。
プラクシスには、下記5つの過程があります。
①登録:周囲の環境に気づく
②観念化:運動目標を設定し、その目標を達成する方法について考える
③企画:目標を達成するために必要な動作とその順番を意図する
④実行:正確に動作を実行する
⑤フィードバック:運動の目的を達成したか確認し、続いて起こることに対処する
これらのどこかに躓きがあると、運動行動が達成されず、いわゆる「不器用」な状態になってしまいます。
しかし、「不器用」とひとまとめにするのではなく、プラクシスの過程において、どこに問題点があるかを明らかにすることで、対応の仕方が見えてくるのです。
今回は中2の男の子の事例から、「プラクシス」について読み解きました。
彼は、5つの過程の中で「③企画」に苦労しています。
努力家なので、どんな動きにも一生懸命取り組むのですが、動きの順序を分析して組み立てることが苦手で、「とにかくやってみる」作戦では上手くいきません。
小5の運動会の組体操はかなりの難関でした。
どの動きも難しく、特に「背支持倒立」は強敵でした。
そこで、動きを細分化して、まずは「背中を離す」練習のみを始めました。
背中を離すことができるようになったけれど、背中を離した姿勢をキープする腹筋が足りていないことがわかりました。
そこで、足上げ腹筋にも取り組みながら、背中を離す姿勢のキープを練習しました。
さらに「⑤フィードバック」にもアプローチするために、写真を撮って、自分の体がどうなっているのかを知る時間も設けました。写真を見ると、真っ直ぐに上げているつもりの足が、実はずいぶん曲がっていることに気づき(①登録)、もう少し腰を上げる必要があること(②観念化)を知りました。
このような分析と対応を繰り返し、努力家の彼は、運動会では堂々と演技をすることができました。
プラクシスの過程のどこかに困難があると、動きを習得するためにかなりのエネルギーを費やすことがわかります。
しかし、分析と対応が適切であれば、達成できることはたくさんあるのです。
そして、できるようになったことは、飛び抜けて上手になることもあります。
私は、このように努力を続けて、達成する喜びを感じている彼らを、心から尊敬しています。
もし、感覚調整、プラクシスに困難を感じている方が近くにいたら、
どうか、自分の感覚を信じるのではなく、その人の感覚を知ろうとしてみてください。
そして、一緒に考えることで、生活しやすくなるアイディアが見つかるかもしれません🎶
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個性を理解して、才能を伸ばす
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