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たすくからのお知らせ

指さし確認で注目できるようになった

2012年11月23日 金曜日 / カテゴリ:家庭の療育体験談

まーくんアイキャッチ.001

まーくんの紹介

 数年にわたって個人別の課題学習に取り組み,J☆sKepsTMの向上を目指してきました。今回は,「数字とタイル並べ」教材を用いた課題学習を例にして,実践を振り返ります。操作性を考慮した素材の工夫,見え方に応じた提示の工夫,ねらいに応じた教材の段階など,支援技術と教材づくりの改善を重ねてきました。

たすくと出会ったとき

たすくとまーくんとの出会いは,小学4年生の時です。療育は,感覚過敏に配慮して進めました。活動のパターンを作って,1つずつ条件を変えていき,教材や操作方法のスモールステップを踏むことがポイントでした。J☆sKepは,注視物の選択を重視して,指差しに注目したり,位置や色の理解を深めたりしていきました。小学4年から始まった療育は,J☆sKepsTM平均2点から2.7点に向上しました。

まーくんの様子

まーくんスライド1

息子は,中学3年生の男の子です。 特別支援学校に通っています。

子どもの様子を紹介します。息子は,手続き的な記憶が得意です。また,長期記憶に働き掛ける繰り返しの学習方法が有効的です。そして,音の処理がゆっくりなため,話し掛けるスピードに気をつけています。情動のコントロールが難しくて,落ち着こうとして,全身が緊張します。大きい声や大きい音がすると,その場で固まってしまう位,身体が緊張してしまうの で,学習に取り組むときにも,配慮をしながら進めています。

まーくんが取り組む機能的な目標

まーくんスライド2

療育では,取り組んでいる機能的な目標は,「1から12の数字とタイル並べ」です。取り組み始めたのは,2007年頃で,2012年の途中まで,およそ6年位やっている課題です。もちろん,その期間,ずっとそればかりやってきた訳ではありません。他の課題にも取り組みながら,「今は無理だな~」と思ったら,無理せず課題を修正しながら,家庭療育を進めてきました。ただ,長いスパンで課題に取り組んでいる中で,今だなというタイミングが来るので,それを見逃さずに拾っていき,取り組むようにしてきました。

システム理論

まーくんスライド2

システム理論では,静態的システムから流動的システムに,チャレンジをしている段階になります。

療育の実際 算数:逆数

まーくんスライド4

それでは,療育の実際についてご紹介します。課題は,「1から12の数字とタイル並べ」です。息子は,完成した後に,確認をしながら覚えるタイプです。だから,最後の確認する手続きをとても重視して行っていきいました。

紙製のタイル

まーくんスライド5

最初に取り組んだのは,紙製のタイルです。タイルを右側に1から3個呈示して,順番に並べることを教えました。しかし,ここで問題になったのが,紙製のタイルをボードに移すと動いてずれてしまうことでした。そこばかりが気になり,学習に集中しにくかったため,タイルの素材を磁石タイルに変更しました。

磁石タイル(缶づめ)

まーくんスライド

次の教材では,缶づめの磁石タイルに変えました。磁石のタイルだと,ボードに移したときにピタッと止まるので,ずれることが気にならなくなりました。また,つまみやすくなったことも良かったです。ただ,問題点として,缶づめのタイルの5のまとまりをつかんで,長さを見比べることが難しいと課題が残りました。

磁石タイル(瓶づめ)

まーくんスライド

そこで,全部線が書いてある瓶づめのタイルを使うことにしました。瓶づめのタイルでは,タイルを数えるようになり,手元もよく見るようになりました。ところが,タイルを数える時に,タイルに書かれた“線”を指で数えていたことが分かりました。注視物の選択の難しさですね。これでは,数えるときに数が足りなくなってしまうので,粒タイルに変更することにしま した。

磁石の粒タイル

まーくんスライド

ここまでは,右側にタイルを一粒ずつ呈示して,一つずつ数えながら並べる方法で,学習を進めました。この学習方法によって,タイルを確実に指差すことができるようになりました。ただ,ここで問題となったのは,タイルを右側に呈示すると,ボードに置くまでの距離が長く,集中が切れてしまうということでした。

  この頃(2011年),アセスメントで,視野の課題を指摘されました。本人の焦点はとても狭くて,10×15㎝位の範囲が見やすいこと。また,確実に注目できるのは,5×10㎝の範囲であることが分かってきました。

まーくんスライド

  そこで,視野の課題に応じて,見やすい範囲にタイルを呈示するため,粒タイルをボードの下に置くようにしました。そして,呈示された粒タイルを先に数えて確かめてから,一つずつ並べるということを教えて行きました。これにより,集中力が続くようになり,数唱と指差しの位置が一致するようになってきました。視野の課題に配慮したこともありますが,彼が細かいものが好きなので, 粒タイルを使用したことは,有効だったのでないかと思っています。 

視野が広がり、注目できるようになった

まーくんスライド

  療育の結果,タイルをボードの下ではなく,右側に呈示しても,タイルを数えて並べることができるようになってきました。また,自ら指差しをして,よく見るようになりました。何よりも,視野が広がり,注目できるようになりました。J☆sKepsTMの注視物の選択の力が伸びてきた実感があります。

療育後のまーくんの変化

まーくんスライド

注視物の選択の力が伸びたことにより,日常場面では,スケジュールやコミュニケーションツールを,自ら指差して確認するようになりました。分からないときは,しつこいくらいに,指差して,確認しています。

また,自ら持ち物の準備の指示書を,指差せるようになりました。食事のメニューを選択するときにも,指差しで答えるようになりました。例えば,初めて訪れたお店でも,写真のメニューを見て,食べたい物に指を指して答えることができています。

書字の学習をするときにも,自ら指を差して確認するようになりました。書く前に確認,書く時に確認,書いた後に確認をしています。勉強以外にも,何事も一つ一つ熟練することで,時間はかかりますが,成果が出ると思います。

まとめ

  現在は,中学3年生という年齢です。「やっとここ?まだ?」と思われるかもしれません。でも,まだ中学3年。これからの人生は長いです。本当に少しずつでも,確実に成長していきます。 やったことは覚えているので, コツコツと続けて行くことを心掛けています。

質疑応答

Q. 小さいタイルを使っていますが,指の操作性は大丈夫でしたか?

A. タイルが小さい方がつまみやすかったです。子どもの様子を見て,合っている方法を見つけてあげることを大切にしていきたいと思っています。

Q. 確認の仕方は,いつも同じですか?

A. 数字の3を読み上げて,タイルを順番に数える手続きを変えないようにしています。型にはめてあげることを大切にしています。

Q. どうして,線を数えていることに気付いたのですか?

A. 彼は,トントントンと早くタイルを数えているのですが,そのタイミングで,「これは,線を数えているな」と気付きました。

Q. 注目させるためのコツはありますか?

A. 視線が手元に落ちた時に,言葉掛けをするようにしています。それから,できたときに,すかさず褒めることを心掛けています。

Q. 集中させるためのコツは何ですか?

A. 呈示する量を工夫しています。タイルは,3枚くらいが丁度良い量でした。5枚にも取り組みましたが,途中で集中が 切れてしまうようです。

Q. その他に,注意していたことはありますか?

A. 相手の顔を見て判断することがあるので,視線を教材に落としたり,目を見ないように隠したりしていました。本人が何に注目をしているのか,何を確認しているのかを確実に捉えることが大切だと思います。それから,急かさずに待つことを大切にしています。実は,タイルを確認するときに,触りたくなくて,指の関節や指の爪先で押さえて確認していました。確認する特徴が分かってきたら,指を差して数えられるようになりました。

Q. 数量の概念は,生活場面への応用できたことはありますか?

タブレットや薬の数を,「1,2,3」と数えることができるようになりました。

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